マネジメントレビューとは何か

最近、アイソス(発行 株式会社システム規格社)という月刊誌の購読を始めました。
ISOの専門誌です。
その中に「ISOを斬る」という連載があるのですが、
№146号(2010年1月号)の第4回においては
マネジメントレビュー」が俎上に上がっています。
私の持論と全く同じ箇所もあり、違う箇所もあり、参考になった箇所もあり・・・
今回はそれに触発されて、私見による「マネジメントレビューとは何か?」を書きます。
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規格条文を見ると、インプットやアウトプットの項目が色々書かれていますが、
それらを認証取得のために機械的に実行しようとすると、ただの「儀式」になってしまいます。
(なっている企業は多いと思います。)
そこで、規格が言わんとする本質は何かを考えてみました。
・マネジメントレビューの主体は?
 →トップマネジメント
  当然ですが、トップが主体的に取り組まない限り、
  意味のあるマネジメントレビューは行えませんし、
  マネジメントシステム自体の意味も疑わしくなってしまいます。
・マネジメントレビューの対象は?
 →マネジメントシステムそのもの
  日常的に起こる、現場での問題は対象としてそぐわないと思います。
  私は、2009/10/25~2009/11/29にかけて連載した「マネジメントシステムの正体」において、
  「マネジメントシステムには3層ある。」とし、
  それぞれの層に対して監査とレビューが必要だと書きました。
  ただ、日本全国に工場や事業所があるような大企業では、
  「核に対するマネジメント」までも社長がレビューするのは現実的ではありません。
  規格条文の裏を読めば、
  「トップへインプットし、大所高所からの見直しが必要」な事案について
  レビューするのがマネジメントレビューですから、
  企業規模や事案の重要度によっては、「トップが関わらないレビュー」で済ませても良いはずです。
  それは企業ごとの裁量に任されているはずです。
・何のために行うのか?
 →マネジメントシステムがちゃんと機能しているか、
  今後もこのままでよいのかを大所高所から評価し、
  必要に応じて手を加えるため。
  
  ほぼ必然的に、定期的な活動となります。
  日常的に現場業務を見直すのは「核に対するマネジメント」であり、現場の管理職の仕事です。
・いつ行うのか?
 →アイソスでも「よくある誤解」として上げられていますが、
  「年一回」という定説(?)にこだわる必要はありませんし、
  マネジメントレビューと言う名の独立した会議体も必要ありません
  企業が必要と判断した周期で、時には臨時で、行えばよいはずです。
 
・どの程度細かい情報を扱うのか?
 →これも、企業が必要と判断したレベルで良いはずです。
  ただ、規格条文を読む限りでは、かなり荒いレベルで良さそうです。
  
  規格は大企業にも適用可能なように作られています。
  インプットの必須項目として、「顧客からのフィードバック」や「是正処置」が挙げられていますが、
  なにも「苦情(や是正処置)が発生する度」に行う必要はありません。
  そんなことを規格が意図しているとは思えません。
  もし規格の意図がそうであるならば、大企業のトップマネジメントは
  一日中マネジメントレビューをしていなくてはいけません。非現実的です。
  対象期間中の統計的な情報をインプットとするだけでも、規格には適合するはずです。
  もちろん、企業が自主的に細かい情報も扱うのは、自由です。
  企業規模によっても、適切なレベルは異なるはずですから。
  ただし、やはり「核に対するマネジメント」と混同してしまうと、
  マネジメントレビューの位置づけが曖昧になるので注意が必要です。

「マネジメントシステム」の正体 <4>

前回は、マネジメントシステムの階層構造を明らかにするため、
成長と発展という、企業の至高の目的からスタートし、
現場レベルまで辿って行きましたが、今回はその逆を行きます。
基本的には<3>の内容を、視点を変えて言い換えただけのものです。
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【核】 (現場業務)
現場は、定められた「業務の手順」に従って日々の仕事をこなし、
個別業務の方針(目的)、すなわち「この案件においてお客様を満足させること」などの
実現を目指します。
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【現場業務体系】 (核に対するマネジメント)
現場が手順にしたがって仕事をし、かつ、その手順が適正なものであったら、
個別業務の方針を実現出来、その度合いは目標を達成するはずです。
もし、個別の現場業務が目標に未達であれば、
原因は手順通りにやっていないか、手順に欠陥があるかのどちらかです。
改善が必要です。
そういったチェックと改善を「現場監督」とし、
そのマネジメントシステム全体を「現場業務体系」とします。
<3>の相応箇所
>>業務の手順の有効性は、業務方針をどれだけ実現できたかによって測られます。
現場の業務は日常的に行われているものですので、
それに対する現場監督も日常的でなければいけません。
それを担うのは課長クラスの「現場の管理職」です。
現場業務体系は、日々の個別業務(の遂行と改善)を繰り返すことで、
中期的に事業方針を実現することを目指します。
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【事業体系】(現場業務体系に対するマネジメント)
現場業務体系がちゃんと機能し、個別の現場業務が円滑に遂行・改善されているのであれば、
その成果として、中期的に見た事業方針も実現でき、その度合いは目標を達成するはずです。
もし、目標に未達であれば、原因は現場業務体系の機能不全です。
現場の管理職がちゃんと現場を監督していないか、監督のし方が間違っているか、
あるいは個別業務の方針や目標の立て方、測定のし方が間違っていたのかもしれません。
改善が必要です。
そういったチェックと改善を「業務監査」とし、
そのマネジメントシステム全体を「事業体系」とします。
事業体系は、長期的に経営理念を実現することを目指します。
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【経営体系】(事業体系に対するマネジメント)
事業体系がちゃんと機能し、現場業務体系が継続的に改善されているのであれば、
その成果として、長期的に見た経営方針も実現でき、その度合いは目標を達成するはずです。
ここでいう経営方針は、その企業にとっての至高の目的、すなわち存在意義のようなものとします。
そしてその目標は、売上高やリピーター率など、
「市場からの支持」を表す絶対的指標を用いるのがよいでしょう。
理由は、2009/11/8投稿の『「マネジメントシステム」の正体 <2>』で述べたとおり、
マネジメントシステムの「拠り所」を築くためです。
もし、目標に未達であれば、原因は事業体系の機能不全です。
業務監査がちゃんと行われていないか、やり方が間違っているか、
あるいは事業方針や目的の立て方、測定のし方が間違っていたのかもしれません。
改善が必要です。
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以上が、私の考える「1核+3層」です。
(企業規模や業種業態によっては、
 事業体系と現場業務体系を同一視してもいいのかもしれません。)
3つのマネジメントシステムが出てきましたが、
それぞれの中で「チェックと改善」が行われなければいけません。
規格の要求事項としては「内部監査」、「マネジメントレビュー」という言葉で括られているため、
社内の年間行事として1~数回行う場合が多いと思いますが、
本来、それぞれの層において、それぞれの適切なサイクルで、
それぞれ意味合いの全く異なる監査とレビューをやらなければ意味がないと思います。
私の解釈が一般的なISOの解説と違うのは、
売上高やリピーター率といった概念を取り入れていることです。
このブログ内で度々書いていますが、本来、企業にとっては
「ISO認証を導入するかどうか」も一つの経営判断でしか無く、
社内をうまくマネジメントするためのイチ手段でしかありません。
それが本当に有効であれば企業は儲かるはずですし、
儲けるために役に立たないシステムなら、さっさと止めるのが経営判断というものです。
もちろん、儲けることだけが企業の存在意義ではありませんけど。
審査員は経営コンサルタントではありません。
たとえ売り上げが激減していても、規格と照らし合わせて
必要な文書や記録がありさえすれば(必要な活動が確認できれば)、
とりあえず認証してくれます。
いわば減点法の審査です。
しかし、企業活動という生産的活動の評価を、減点法で行うことには限界があります。
(2009/10/3投稿 『文書の意味を見直そう <3> 「品質目標」』参照)
顧客からクレームを付けられない営業マンが良い営業マンでしょうか。
違います。
しっかり売上ノルマを達成しつつ、
無理な営業でクレームを起こすことのない営業マンが良い営業マンなのです。

「マネジメントシステム」の正体 <3>

企業には「成長と発展」という至高の目的があり、企業内のシステムは全て、
つまるところその実現のための手段です。
(もちろん、最上位クラスの目的を他にも定めている企業は多い事と思います。
 「社会に資する」、「○○文化の創造」etc… )
これはつまり、その企業の存在意義と同義であり、
いわゆる「経営理念」としてWebサイトなどに掲げられているものです。
次に、経営理念実現手段としての「事業」があります。
具体的にどんな事業を営むことで会社を成長させるのか?ということです。
それが事業方針です。
事業の有効性は、経営理念をどれだけ実現できたかによって測られます。
当然その次には、事業方針実現手段としての「業務」があります。
具体的にどんな業務をどのように行うことで事業方針を実現するのか?ということです。
それが業務方針です。
日常的に行われる現場の業務の方針です。
業務の有効性は、事業方針をどれだけ実現できたかによって測られます。
そして、業務方針の実現手段としての「業務の手順」があります。
これが「(コア)」に当たります。
具体的にどのように現場の仕事を行うことで業務方針を実現するのか?ということです。
日常的に行われる現場業務の仕組みです。
業務の手順の有効性は、業務方針をどれだけ実現できたかによって測られます。
以上が、私の考える「1核+3層」です。
さて、まだちょっと分かりにくいかと思います。
(書いている自分でもそう思います。すみません。)
今回はトップから下りてきましたが、次回は逆に現場業務から経営理念まで上がっていきたいと思います。
→to be continued.

「マネジメントシステム」の正体 <2>

前回の続きで、マネジメントシステムの「下層」と「上層」にあるマネジメントシステムについて、
もう少し詳しく解説します。
まず、企業が目的αを実現するために、その実現手段としてのシステムをa導入したとします。
システムaが有効かどうかを判断するには、
「システムaを導入した結果、目的αがどれだけ果たせたか」を調べる以外にありません。
それ以外のことを調べても無意味です。
これは別にISOが標榜するマネジメントシステムに限ったことではなく、一般論として通用するはずです。
もし目的を十分に果たせていなかったら、それはシステムaのどこかに不備があったということなので、
それを探し当てて改善しないといけません。
そういった取り組みは、システムa自身より上位の枠組みです。
これをシステムAと呼ぶことにします。
目的αをより高度に実現するために、システムaを継続的に改善するシステム。
それがシステムAです。
そして、システムAより上位の概念もまた、存在します。
「そもそも、目的αを実現しなくていけないのは、何のためなのか?」ということです。
システムAもまた、より上位の目的を実現するための実現手段としてのシステムなのです。
さて、このままだと無限に「より上位の目的」が積み上がってしまいそうですが、
そういうわけではありません。
企業には「成長と発展」という”至高の目的“があるはずだからです。
もしかしたら異論もあるかもしれませんが、
一企業としては、それ以上の目的を持たないものとします。
そして、その実現度合いは、
「売上高」、「リピーター率」、「従業員の数」、「従業員満足度」などの指標に現れます。
(もちろん、他にもあるでしょう。)
最上位の目的の実現度合いを測る指標は、”絶対的“なモノである必要があると思います。
なぜなら、それがあらゆる下位システムの”拠り所“となるからです。
これがもし、「顧客満足度アンケートの結果」のような相対的なものだとすると、
社内のあらゆるシステムが相対化してしまいます。
「顧客満足度のアンケートの結果」が、
顧客の満足度を本当に表しているのかどうかを担保するものが無くなってしまうからです。
「売上高」や「リピーター率」のような客観的かつ絶対的なものであれば、拠り所とするに十分です。
もしアンケート結果が良くてもそれらの数字が落ちていれば、
それはアンケートの手法が間違っていることの証明になり、改善のきっかけとなりますから。
寝酒が回ってきたのでこの辺で・・・    →to be continued.

「マネジメントシステム」の正体 <1>

今回の記事は、2009年2月8日の「管理と監視」の”改訂版”に当たります。
あの記事においては、マネジメントシステムの構造を「2層」として捉えていましたが、
最近、考え方をバージョンアップしまして、「1核+3層」としました。
現場の業務が「核」で、それを取り巻くように
3層の「マネジメントシステム」があるという考え方です。
※「品質」を直接産み出すことができるのは現場だけですので、
  現場を中心に据えることは重要なことです。
ISOの規格条文を読む限りでは、それら3つは区別して記述されていません。
全て、「マネジメントシステム」という名称で呼ばれています。
実際には別の物を指しているのですが、行間からそれを読み解かねばなりません。
これが、ISOを分かりにくくしている元凶だと思います。
本当は、当たり前のことを言っているに過ぎないのですが。。。
まず、規格上の「マネジメントシステム」の定義を見てみましょう。
日本規格協会編 「対訳ISO9001:2008」のP213には、
「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」とあります。
実はこの時点で、すでに2層構造なんですね。
1、初めに方針ありき。
2、その方針で、達成したい目標がある。
3、目標を達成するための手段(としてのシステム)がある。
マネジメントシステム全体はこの3要素から成立し、
3番目の要素はそれ自体が独立した(下層の)マネジメントシステムでもあるわけです。
これらを区別せずに、一言で「マネジメントシステム」と呼んでいると、
自然に理解出来るはずのものも、理解できなくなってしまいます。
また、規格はこうも要求しています。
4.1一般要求事項 「品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなくてはならない。」
この文章も、ちょっとおかしいと思いませんか?
どんなシステムであれ、そのシステムの有効性を評価し改善するのは、
そのシステムよりも一回り大きな枠組みでなければいけませんよね。
ウィリアム・エドワーズ・デミング博士も、
「システムは自分自身を理解できない。変革には外部からの視点が必要である。」
とおっしゃっています。
いわゆる「マネジメントシステム」の下層上層にも「マネジメントシステム」があることを
お分かりいただけたでしょうか。
今晩はこの辺で・・・            to be continued.

認証ビジネスとは

企業が認証を取得しようと思ったら、当然ながら、外部の審査機関から
審査を受ける必要があります。
認証取得後にも、定期的に受審する必要があります。
この外部審査で恥をかかないよう、規則を守ろう、描くべき書類をちゃんと書こう、
といった意識が組織内に芽生えます。(ホントか?)
これを”外圧効果”と呼び、ISOなどの認証を取得することのメリットとして挙げられますが、
私はこの効果に大変懐疑的です。
そもそも認証とは、マネジメントシステムをしっかり運用できている企業に対して与えられるものです。
審査という外圧効果を前提として成り立っているマネジメントシステムは、
本来、認証に値しないはずです。
しかし、審査自体が外圧であるため、審査を通じてそれを見抜くことは理論上不可能です。
すると、完全な審査というものは存在しないことになってしまいます。
認証ビジネスって何なんだろうなぁ、と、ちょっと虚しくなりました。

文書の意味を見直そう <1>  「マニュアル」後篇

前回(中篇)では、品質マニュアルを一番活用するのは経営層である、と書きましたが、
それに劣らず、中間管理職層にとっても重要です。
特に、「プロセス間の相互関係」の部分がです。
実はそれこそが、企業という活動体の実態であると私は考えています。
一般的に、企業の構成というと「部署」がツリー上に並んでいる「組織図」を
思い浮かべることでしょう。
しかし、「部署」とは、「同職種のまとまり」でしかありません。
そしてそのツリー図とは、権限構造を表してはいるでしょうが、
それは企業の一面でしかありません。
企業の実態とは、その企業が営んでいる事業の在り様のことです。
そしてその構造を表すものこそが、「プロセス間の相互関係」だと考えています。
「プロセス間の相互関係」を表したものを見ることで、
「各プロセスの業務が、その企業の事業活動全体の中で果たす役割」を
正確に、簡単に認識出来るようになると、中間管理職層にとっても、
経営層にとっても便利ではないでしょうか。
偏狭なセクショナリズムに陥ることも無くなると思います。
もちろん、現場の一般社員にとっても意味のある情報です。
さて、そこで挙げられる「プロセス」には、どんなものがあるでしょうか。
「営業プロセス」「購買プロセス」「設計プロセス」「販売プロセス」
などがあると思いますが、
品質マニュアルに「経営者にとっての品質管理の手順書」という意味を持たせるならば、
ここに「マネジメントプロセス」が必要です。
元々、マネジメントシステムというのは、「現場の管理」と「それに対する管理」
という二層のマネジメントから成っています。
(これらが、規格の条文においては特に区別されずに記述されていることが、
 ISOを分かりにくくしていると思います。)
「プロセス間の相互関係」に盛り込むべき「マネジメントプロセス」とは、後者を指しています。
前者は中間管理職の仕事だとして、後者は経営層の仕事でしょうから。
これにより、QMSの中における、経営層の位置づけを明確に出来ます。
最後にもう一つ。
「品質方針」も、品質マニュアルに盛り込んではいかがでしょうか。
品質方針については、次回「品質とは何か。その方針とは何か。」について詳述します。
(品質目標をあえて盛り込まない理由も書きます。)
社内で役に立たせることを目的とし、
自社のQMSの在り様を社内の各層向けに示す文書。
量にもよるかもしれませんが、簡潔にまとめられたなら
ポスターにして社内に常時掲示しておくといいですね。

文書の意味を見直そう <1>  「マニュアル」中篇

前回の続きです。
品質マニュアルという、「自社のQMSの在り様」を定義するものがあることで、
直接のメリットを一番享受する、社内の人間とは誰でしょうか?
それは、経営層(トップマネジメント)だと思います。
なぜなら、QMSを構築し、修繕し、活用してゆく主体は、経営層のはずだからです。
(”マネジメントシステム”って言うぐらいですから。)
品質マニュアルを、経営層が品質管理においてすべきことを纏めた
「経営の手順書:品質管理編」という位置づけにしてみてはいかがでしょう。
(もちろん、QMSの有効性をチェックし、品質マニュアル自体を
 改訂してゆくことまでが経営層の仕事です。)
経営層にとっての仕事である「経営」という業務自体は多岐にわたる内容を含んでおり、
その中の一分野である「品質管理」についての手順書です。
そういう風に考えてみると、
「審査の時にだけ書庫から引っ張り出されてくる、審査員向けの説明資料」
とは違った品質マニュアルが出来るのではないでしょうか。
                                    ・・・・まだつづきます。

文書の意味を見直そう <1>  「マニュアル」前篇

ISO9001では、「品質マニュアル」というものの作成が要求されます。
ISO27001ではマニュアルの作成こそ要求されていないものの、
似た内容の文書化が求められているので、
「ISMSマニュアル」などの名称で作成している企業も多いことでしょう。
品質マニュアルに求められる内容は、
 (1) 品質マネジメントシステム(以下QMS)の適用範囲、および除外とその理由
 (2) QMSについて確立された、「文書化された手順」、またはその参照情報
 (3) プロセス間の相互関係に関する記述
の3つです。
これだけだとちょっと分かりにくいので、それぞれの意味を解説します。
 (1) 組織や製品の性質により、箇条7「製品実現」の中の要求事項に
    適用が不可能なものがあった場合、除外を考慮出来ます。
 (2) 「文書化された手順」というと、現場作業の手順書を思い浮かべてしまいますが、
    ここで言うのは「QMSについて確立された」ものです。
    要求事項として明記されているのは、実は6つだけです。
     ・文書管理の手順
     ・記録管理の手順
     ・内部監査の手順
     ・不適合製品管理の手順
     ・是正処置の手順
     ・予防処置の手順
    ※もちろん、組織が必要だと判断した手順書を追加してもかまいません。
    そして、これらの「手順書」を、品質マニュアルの中に盛り込むか、
    別途作成した上で、品質マニュアルの方に「○○については××を参照のこと」と
    書いておかなくてはいけません。
 (3) プロセスとは、「組織内の業務のまとまり」と思ってください。
    その「まとまり」をどういう単位で設定するかは組織の自由ですが、
    営業、設計、製造、といった単位だと分かりやすいでしょうか。
    それらの相互関係とはつまり、
    「営業プロセスにおいて営業マンが顧客から聞き出してきた要件を、
     設計プロセスに伝達する。」
    といったものです。
    各プロセスの内部で何を行うかは、ここでは関係ありません。
これらの情報を記載する品質マニュアルとは、
つまるところ、その組織のQMSの有り様を定義する文書です。
審査する側にしてみれば、こういった文書がなければ審査のしようがありませんので
作成が必須とされるのもうなずけます。
しかし、これからISOを取得しようという企業で、
すでに類似の文書が存在する企業は少ないのではないでしょうか。
(長い歴史の中で自社なりの品質管理手法を磨き上げてきた企業であれば、
 すでに似たものを作っているかもしれません。)
すると、「いままで考えたこともなかった新手の文書が必要らしいぞ。」ということになり、
おのずと「ISOのための文書」として品質マニュアルが作られることになってしまいます。
しかし、審査員が読むためだけの文書なんて、本来組織には必要がないはずです。
そんな文書に振り回されるのは馬鹿らしいですよね。
QMSにしろISMSにしろ、組織にとって(=組織を構成する一人一人にとって)、
本当に必要なシステムであるべきであり、
またそうでなければどうせまともに機能しません。
末端の各種文書も同じです。
 「手順書があって良かった。」
 「記録が残ってて良かった。」
 「雛型が定められていて良かった。」
そういう声が組織の内部から聞こえてくるのが理想です。
では、品質マニュアル(≒QMSの在り様を定義するもの)が存在することで
「これがあって良かった!」と言ってくれそうな人は誰でしょうか?
その人のためになるような品質マニュアルを作ることで、
「無駄な文書作り」から解放されると同時に、
マネジメントシステムのレベルアップにもつながることでしょう。
 
                                    ・・・・次回へつづく。

ISO事務局って一体・・・

ふと思った。
形骸化したISOの運用に辟易し、
「ISOのためだけの仕事」や「審査のための書類作り」はもうやめよう、
という企業があるそうだ。
であるなら、まっさきにISO事務局だのISO推進室だのを廃止するべきだろう。
あれこそまさに、「ISOのための仕事」の象徴だと思う。
現場の業務に浸透したISOを目指すなら、
(そもそも、マネジメントシステムとはそれを目指しているはずである。)
書類作りの部署など必要無いはずである。
現場にとって「本当に必要な書類」なら、現場が作ればいいはずだ。
そもそも、そういう書類は現場の人が自分の手で書かないと、
結局、現場の実情にそぐわない変なものが出来上がってしまい、まともに機能しません。
現場が必要としない、書いても役に立たない書類なら、廃止すればいいのである。
その判断も、現場が中心になってやればいいと思う。
もしこれまで、現場が「必要な書類」を書いてこなかったとしたら、
現場にとっては作業が増えるように思われてしまうかもしれない。
だが、それは今までがおかしかったのであり、
必要なもの、意味があるものはちゃんと書いた上で
それを活かしていくよう努力していただかないといけない。
推進室なるものに存在意義があるとしたら、
そういう社内の意識改革を主たる業務とすべきだろう。