「マネジメントシステム」の正体 <4>

前回は、マネジメントシステムの階層構造を明らかにするため、
成長と発展という、企業の至高の目的からスタートし、
現場レベルまで辿って行きましたが、今回はその逆を行きます。
基本的には<3>の内容を、視点を変えて言い換えただけのものです。
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【核】 (現場業務)
現場は、定められた「業務の手順」に従って日々の仕事をこなし、
個別業務の方針(目的)、すなわち「この案件においてお客様を満足させること」などの
実現を目指します。
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【現場業務体系】 (核に対するマネジメント)
現場が手順にしたがって仕事をし、かつ、その手順が適正なものであったら、
個別業務の方針を実現出来、その度合いは目標を達成するはずです。
もし、個別の現場業務が目標に未達であれば、
原因は手順通りにやっていないか、手順に欠陥があるかのどちらかです。
改善が必要です。
そういったチェックと改善を「現場監督」とし、
そのマネジメントシステム全体を「現場業務体系」とします。
<3>の相応箇所
>>業務の手順の有効性は、業務方針をどれだけ実現できたかによって測られます。
現場の業務は日常的に行われているものですので、
それに対する現場監督も日常的でなければいけません。
それを担うのは課長クラスの「現場の管理職」です。
現場業務体系は、日々の個別業務(の遂行と改善)を繰り返すことで、
中期的に事業方針を実現することを目指します。
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【事業体系】(現場業務体系に対するマネジメント)
現場業務体系がちゃんと機能し、個別の現場業務が円滑に遂行・改善されているのであれば、
その成果として、中期的に見た事業方針も実現でき、その度合いは目標を達成するはずです。
もし、目標に未達であれば、原因は現場業務体系の機能不全です。
現場の管理職がちゃんと現場を監督していないか、監督のし方が間違っているか、
あるいは個別業務の方針や目標の立て方、測定のし方が間違っていたのかもしれません。
改善が必要です。
そういったチェックと改善を「業務監査」とし、
そのマネジメントシステム全体を「事業体系」とします。
事業体系は、長期的に経営理念を実現することを目指します。
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【経営体系】(事業体系に対するマネジメント)
事業体系がちゃんと機能し、現場業務体系が継続的に改善されているのであれば、
その成果として、長期的に見た経営方針も実現でき、その度合いは目標を達成するはずです。
ここでいう経営方針は、その企業にとっての至高の目的、すなわち存在意義のようなものとします。
そしてその目標は、売上高やリピーター率など、
「市場からの支持」を表す絶対的指標を用いるのがよいでしょう。
理由は、2009/11/8投稿の『「マネジメントシステム」の正体 <2>』で述べたとおり、
マネジメントシステムの「拠り所」を築くためです。
もし、目標に未達であれば、原因は事業体系の機能不全です。
業務監査がちゃんと行われていないか、やり方が間違っているか、
あるいは事業方針や目的の立て方、測定のし方が間違っていたのかもしれません。
改善が必要です。
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以上が、私の考える「1核+3層」です。
(企業規模や業種業態によっては、
 事業体系と現場業務体系を同一視してもいいのかもしれません。)
3つのマネジメントシステムが出てきましたが、
それぞれの中で「チェックと改善」が行われなければいけません。
規格の要求事項としては「内部監査」、「マネジメントレビュー」という言葉で括られているため、
社内の年間行事として1~数回行う場合が多いと思いますが、
本来、それぞれの層において、それぞれの適切なサイクルで、
それぞれ意味合いの全く異なる監査とレビューをやらなければ意味がないと思います。
私の解釈が一般的なISOの解説と違うのは、
売上高やリピーター率といった概念を取り入れていることです。
このブログ内で度々書いていますが、本来、企業にとっては
「ISO認証を導入するかどうか」も一つの経営判断でしか無く、
社内をうまくマネジメントするためのイチ手段でしかありません。
それが本当に有効であれば企業は儲かるはずですし、
儲けるために役に立たないシステムなら、さっさと止めるのが経営判断というものです。
もちろん、儲けることだけが企業の存在意義ではありませんけど。
審査員は経営コンサルタントではありません。
たとえ売り上げが激減していても、規格と照らし合わせて
必要な文書や記録がありさえすれば(必要な活動が確認できれば)、
とりあえず認証してくれます。
いわば減点法の審査です。
しかし、企業活動という生産的活動の評価を、減点法で行うことには限界があります。
(2009/10/3投稿 『文書の意味を見直そう <3> 「品質目標」』参照)
顧客からクレームを付けられない営業マンが良い営業マンでしょうか。
違います。
しっかり売上ノルマを達成しつつ、
無理な営業でクレームを起こすことのない営業マンが良い営業マンなのです。