日本人の大多数が抵抗派らしい。

「どんなデータも、解釈次第で全く違う結論が出る」というお話です。

 

 

琉球新報の記事で、共同通信社が2015年5〜6月に行ったアンケートの結果が報じられています。

「日本が他国から侵略されたらどうするか」という質問に対する回答の内訳は、

・武器を取って戦う(29%)

・非暴力で抵抗する(41%)

・逃げる(16%)

・降伏する(7%)

というものだったそうです。

 

 

琉球新報は下3つの選択肢をまとめて「64%が非交戦派だ」と主張しているのですが、私は全く違う解釈をしています。

それは、上2つの選択肢をまとめて、「70%がなんらかの手段で抵抗する意思を持っている」とする解釈です。

 

 

また、ネット上ではこのアンケートに対して、「そもそも "非暴力で抵抗する" などという選択肢は非現実的であり、回答者を誤誘導している」という批判があるのですが、これについても私の考えは違います。

その選択肢も、けっして非現実的ではないと思います。

ある地域が他国に占領されてしまったとして、きっと抵抗運動を始める人がいるでしょうし、自衛隊の特殊部隊が奪還作戦のために潜入してくることも考えられます。

当然、占領軍はそういった活動を取り締まろうとするわけですが、一般市民の協力を得られなければ情報を集めることは難しいでしょう。

地域社会のネットワークにおいては、「3丁目の山田さんは最近抵抗組織に入ったらしい」だとか、「5丁目の佐藤さんの家には色々な人が出入りしている。もしかしたら抵抗組織のアジトになっているのかも」といった噂レベルの情報が自然と流れるものです。

占領軍からすれば喉から手が出るほど欲しい情報ですが、仮に占領軍が調査に来ても、そういった情報を「知っていても話さない」ことで、立派に抵抗したことになります。

"非暴力で抵抗する" を選んだ41%の回答者は、進んで抵抗組織に入るような「積極的抵抗」をせずとも、きっと占領軍に対して非協力な「消極的抵抗」をすることでしょう。

有事の際に積極的もしくは消極的な抵抗をする人が全体の7割を占めているのであれば、まずまず日本は安泰ではないでしょうか。

 

 

なお、琉球新報はこのアンケート結果を以って「安倍政権が目指す『戦争のできる国』を国民は拒否していると見るべき」と主張していますが、どういう論理でそういう結論が導き出されるのか、まったく理解できません。

北朝鮮が混乱して一番困るのは中国。

北朝鮮の金正日総書記は、すでに一昨日死去していたとのこと。
後継者は金正恩で決まりだそうだが、まだ権限委譲は完了していないらしい。
誰かが「摂政」になるのだろうが、権力の空白期間に混乱が起きる可能性がある。
すると、中国(の人民解放軍)が乗り出してくるかもしれない。
中国にとって、北朝鮮の「衛星国」としての使い道・重要性に変わりは無いのだから。
北朝鮮がコントロール出来ない状態になって、
そこに米韓の手が伸びてくることを中国は最も嫌うはずである。
そうなった場合に直接の影響を受けるのは韓国だから、
ただでさえ海で睨み合っている中韓の緊張が一気に高まることになる。。。
日本はそれを利用して、韓国を間接的に後方支援するのと引き換えに
各種対韓交渉を有利に進めればよいのだが、
たぶん日本の外務省にそんな駆け引きは出来ないだろうな。
残念ながら。
スムーズに権限委譲が進み、何事も無かったかのように
「金王朝」が続くのであれば、まだマシなんだけど。

第18回防衛大学校教授による現代の安全保障講座 (後編)

中編に続き、「アラブの春」についての解説です。
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[6]国家の性格と民衆運動
■エジプト、チュニジア型
・国家としてのまとまりがある。
・国民の一体性が強い。
・軍の独立性が高い。為政者の私的な道具ではない。
■シリア、イエメン、リビア型
・国家としてのまとまりが弱い。
→民族や宗教・宗派、部族対立が強い。
・軍が国民から乖離。
→経済と権力の依存関係の中に組み込まれている。
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[7]シリアの動向
■アサド体制
・イスラム教アラウィー派(人口の15%)中心の少数派体制。
・国民の多数はスンニ派。ほかにキリスト教諸派等。
・父アサド時代、スンニ派のムスリム同胞団を弾圧。(1982年のハマ事件等)
■シリアの地政学的重要性=アサド体制の特徴
・イスラエルとの(管理された)対立。
→1996年以降、ゴラン高原を挟んで対峙。
本気で戦争をする気はない。(一番安全なPKO?)
・イラン(非アラブ国家)との戦略的関係
イランにとってシリアはアラブ世界での唯一の同盟国
・ヒズボラ(レバノン)とハマス(パレスチナ)を支援。
■アサド体制が崩壊すると・・・
・多数派のスンニ派が権力掌握? ムスリム同胞団の発言力増大?
・国内の混乱→レバノンへ混乱波及?
・イランはアラブ世界への"橋頭堡"を喪失。
・ヒズボラが後ろ盾を失う。
・ゴラン高原でのPKO=UNDOF(国連兵力引き離し部隊)への影響?
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[8]移行期の今後
■難しい移行期間
・新しい運動体/組織はどうなる:若者たちの経験不足
・社会全体が民主化に慣れていない。(政党政治の経験無し)
・民衆の要求にどう応えるか:限られたパイ
・軍の動向(民主化に応じるのか)
→軍が巨大なコングロマリットとなっていて、権益を守るため文民統制が効かない。
■イスラム主義組織の動向
・エジプトのムスリム同胞団
・チュニジアのナハダ
→10月の選挙で単独過半数取れず(4割)世俗2派と連立。
・強さ:草の根的基盤、唯一の組織化された組織、地方はイスラム色強い。
・弱さ:イスラム法導入への国民の危惧、政治改革で他の勢力が活動する余地が拡大

■アルカイダなどの過激勢力
・全体として弱体化(ビン・ラディンなど指導者の殺害)
・民衆の支持減少(イスラム過激派を「恐怖」とみる民衆の増加)
・ただし破綻国家(イエメン、ソマリアなど)で活動の場を得る可能性
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[9]中東の全体的な情勢への影響
■エジプトの新しい外交姿勢
・反イスラエル的な国民感情に敏感
ただしイスラエルとの平和条約は維持。
破棄するとアメリカが黙っていない。維持していれば12億ドルの援助が貰える。
・シナイ半島の治安悪化(ガスパイプライン爆破テロ)
→国内全体の治安問題
・イランとの関係正常化の動き
■パレスチナ
・若者の運動活発化
・ファタハとハマスの暫定統一政府樹立合意(5月)
・9月に国連加盟申請(アメリカは強く反対)
■イスラエルの不安
・エジプトとの関係の冷却
・パレスチナへの国際的な支持増大
・シリアの動向
■イランへのプラスとマイナス
・エジプトとの関係改善の兆し
ムバラク政権との関係は悪かったが、
暫定政権になって変わるかもしれない。
・シリアの動向
イランにとってはアラブ世界への重要な橋頭堡なので、
シリアの現体制を見限って反体制派につくべきか否か迷っている。
現体制がいつまで持つか見通しが立たない。
・イラン国民への影響
■イエメン情勢
・アラビア半島のアルカイダ(AQAP)
・ソマリアのイスラム主義組織との関係(?)
以上です。
【参考】


by Google マップ

第18回防衛大学校教授による現代の安全保障講座 (中編)

前回の続きです。
本当は間にもうひとつの講演があって「3本立て」だったのですが、
特に興味のわかないテーマで集中力も切れそうだったため、出席しませんでした。
<2>中東で何が起きているのか -アラブ諸国の政治変動とその背景-
いわゆる「アラブの春」についての解説です。
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[1]各国の情勢
■チュニジア(ジャスミン革命)
各国で起きている反政府活動の発端となったのはこの国です。
・2010年12月、青年が抗議の焼身自殺
・一気に反ベンアリ運動として拡大。
・2011年1月14日、ベンアリ大統領がサウジへ亡命。
■エジプト
・カイロで連日のデモ
・主要都市へ拡大
・2011年2月11日、ムバラク大統領退陣
 最後はアメリカから引導を渡される。亡命せず逮捕され、裁判中。
・軍最高評議会が実験掌握
 当初は、一定期間経過後に選挙を実施して民政に移管すると約束。
 予算などで軍に特別な権限を与える新憲法を導入しようとするなど
 権益維持の姿勢を見せたため、現在は軍に対してデモが起きている。
■リビア
・2011年2月から内戦状態
・2011年3月、国連安保理決議に基づき、NATO介入。
・2011年8月末、カダフィ政権崩壊。暫定国民評議会が実験掌握。
・2011年10月20日、カダフィ大佐死亡確認。
■シリア
・2011年3月から激しい反政府デモ
・アサド政権による弾圧継続中。国連の推定によれば、3500人以上が死亡。
 (外国の報道陣はシャットアウト中)
・内政干渉しないのが建前だったアラブ連盟の各国も、
 国内からの批判を恐れシリアには積極的に介入。
 シリアの加盟資格を停止し、経済制裁中。
■その他
バハレーン、イエメン、サウジ、ヨルダン、モロッコなどで
体制転換や政治改革を求める動き。
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[2]現状
■体制移行中
 チュニジア・・・10月に制憲議会選挙実施)
 エジプト・・・・11月28日、国民会議選挙実施
 リビア・・・・・10月に暫定政府樹立、8ヶ月以内に制憲議会選挙実施予定
■一定の改革やバラマキ政策で鎮静中
 ヨルダン、サウジ、オマーン、モロッコ
■国家による徹底的な弾圧
 バハレーン(王家はスンニ派で、国民の7~8割はシーア派。対立は昔から。)
■デモと暴力の拡大
 ・シリア
 ・イエメン(背景には、統合して20年しか経っていない南北の対立もある)
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[3]共通の背景:民衆の怒り
・高い失業率、富の偏在、為政者一族による権益独占、腐敗、汚職、不正疑惑etc
 社会主義的な国有企業が経営破綻し、民営化したとします。
 その場合、権力者の親族やその友人などに、安値で払い下げられます。
 そして効率化を行った結果、町には失業者が溢れます。
 結局一部の人間にしか旨みが無いため、不満が募ることになります。
・基本的人権の侵害、政治参加の否定
・「世襲共和制」による閉塞感(シリア、エジプト、リビアなど)
・警察国家(秘密警察による恐怖政治)
・ばら撒き政治の失敗(石油収入の分配の失敗)
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[4]新しいアクター:若者の運動
・若者たちがデモや抗議行動呼びかけ(既成の政党やイスラム主義組織とは別。)
・スマートフォンなどを駆使したネット上での活動
 新しい大衆動員のツールであり、討論の場でもある。
 フェースブック、ツイッター、Youtubeなどで、プロの報道陣がいない場所からでも
 起きた事がすぐに世界中へ発信される。
 "シビックジャーナリズム"と呼ばれます。
・衛星テレビ(特にアル:ジャジーラ)の役割
 これらの若者の運動は突然出てきたものではない。
・エジプト:イラク戦争反対運動、ムバラク大統領後継者問題をめぐる運動、
 労働運動などが続いていた。
・国際的な非暴力反体制運動とのつながり
 エジプトの反体制派は、セルビアの反ミロシェビッチ体制運動家から
 反体制運動のトレーニングを受けたそうです。
 http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/02/16/revolution_u&page=full
 若者は国境をすぐ越えるしネットで情報もすぐ手に入れる。
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[5]オバマ政権の3つの対応
・即時体制移行を要求:チュニジア、エジプト
・改革を要求:バハレーン、イエメン
・軍事介入:リビア
・シリアは?
 EUなどと共に経済制裁。
 しかし、国連安保理では中国とロシアが強く反対し、
 軍事介入は無し。(安保理議長声明のみ)
 
 中国とロシアが欧米の軍事介入を嫌うのは今に始まったことでは有りませんが、
 シリアに権益を持っているので欧米にリードされたくないそうです。
 中国は既にリビアでだいぶ損をしているそうです。
 なお、中国企業は他国へ進出して工場を建てても、
 中国人労働者を雇うので現地の雇用は増えず、摩擦もあるそうです。
 
・軍事介入に関するオバマの原則(2011年3月28日 国防大学演説)
 - 虐殺防止は米国の国益であり、そのための軍事介入は有りえる。
 - 軍事介入は単独では行わず、国連の授権と国際協調が前提。
 - 軍事力による体制転換はしない。
<後編へ続く>

第18回防衛大学校教授による現代の安全保障講座 (前編)

主催:全国防衛協会連合会
日時:2011年11月28日
場所:グランドヒル市ヶ谷
表題のセミナーに行ってきました。
最近は多くの大学が一般市民に向けて公開講座を開設しているので、
防衛大も似たようなことをやっていないだろうか?と考え、
ググってみたらこちら↓のページがヒット。
http://www.mod.go.jp/nda/obaradai/koukai/index.html
日曜の夜に調べたら翌日の開催だったので焦りましたが
とくに予約は必要なく、料金も只なので参加しました。
こういう講座は、出来れば土日に開催していただきたいものです。
私以外の聴衆は、ほぼ全員現役引退後とおぼしき高齢の方ばかりでした。
(おそらく自衛隊・防衛産業関係者が中心です。)
防衛について「広く国民に認識を深めていただく」という趣旨を
掲げているのであれば、運営や広報に工夫の余地があります。
肝心の中身はというと、少々期待外れでした。
しかしTVやネットではあまり触れられない情報を
少しは聞けたので、まあ良しとします。
<1>戦闘車両の世紀 -技術動向と地上ロボットの真価-
戦車・装甲車の開発史、各国の主力戦車とその設計哲学の紹介、
そして戦車を構成する各種装置の解説が中心で、
はっきり言ってつまらない講演でした。
サスペンションの構造など、技術的でマニアックな情報と、
Wikipediaあたりにも書いてありそうな一般的な情報という
両極端な内容をほぼそのまま紹介するだけだったからです。
もっとも、一部興味深い情報もありました。
飛んでくる対戦車ミサイルをレーダーで察知し、
散弾を発射することで数メートルの距離で迎撃する
アクティブ防御システム」という装備があるのですが、
イスラエルの「TOROPHY」というシステムが、実戦での使用に成功したそうです。
兵器開発は「矛」の方が「盾」に先行するものなんだそうですが、
やっと、戦車運用上の鬼門であった
「敵歩兵が一人で携行可能な対戦車ロケット」に対する
有効な「盾」が実用化したようです。
これまでは、「対戦車兵器を持った敵歩兵の待ち伏せ」に備えるには
歩兵を随伴させて互いの欠点を埋め合う「歩戦共同」思想が主流でしたが、
今後は流れが変わるかもしれません。
また、今後の開発上の課題として、「無人のロボット車両」があります。
東日本大震災直後の原発内の調査に一番乗りしたのは、
アフガンやイラクでも実戦投入されている、米iRobot社の「Pacbo」でした。
やはりこういう技術は自国で賄えるようにしたいものです。
日本の科学は世界一チイイイイ!
って言いたいじゃないですか。
もっとも、建設機械の無人化・遠隔操作については、
雲仙普賢岳の噴火以来、国内で20年以上開発が進められており、
原発内の瓦礫除去にも活躍したそうです。
今後は、防衛用途のロボットに求められる
コンセプト及び運用構想の確立が急がれます。
<続く>