Cloudforce2011 Japan 【後編】

いくつかのセミナーで、Salesforceやchatterの具体的な活用事例が紹介されていました。
■SBIモーゲージの事例
モーゲージというのは住宅ローン専門の金融機関のこで、SBIモーゲージが日本初です。
ネット上だけでなく、リアル店舗もフランチャイズ形式で展開するようになり、
それまでの本社集中オペレーションから、分散オペレーションへシフトする必要に迫られる。
そのためにクラウド化を検討。
店舗の急拡大や新業務に対応すべく、柔軟性と拡張性を重視。
高度なセキュリティやGoogleAppsとの連携を評価し、Salesforceを採用。
しかし、店舗間のコミュニケーション不足や、組織拡大により現場の声が経営に届かない、
といった新たな課題も出てきたため、トップダウンでchatterを導入。
情報の速度を高め、経営と現場の情報格差を生め、店舗間の物理的距離を埋めることが目的。
これまでに無かった新しい情報のパス(経路)として、
直営店とフランチャイズ店同士でのコミュニケーションや、
店舗とTOPとのコミュニケーションが生まれた。
(以前は、それらの中間に本社がいて、直接のコミュニケーションが無かった。)
結果、業務上のQ&Aや、アイデア提案もなされるようになり、業務スピードがUPした。
■シマノの事例
釣りのリールや、自転車のギアで有名な、あのシマノです。
金型設計およびCAMの工程での可視化・標準化・人材育成にSFを活用。
いい感じなので他部署へもオススメしているところ。
「職人のことはリスペクトするが、背中で語っている場合じゃない」というコンセプトで、
chatterを通じて、ベテランから新人へのノウハウ伝承も行っている。
設計と製造現場の相談事などもchatter上の記録として残し、かつ公開する。
部品DBや金型DBを整備し、それに関連する「ToDo」も記録として残しておく。
すると、上手な人の残したToDoを、下手な人も見習えるようになる。
すぐれたToDoや、多くの部品に共通するToDoがあれば、オフィシャル化する。
管理から主体性へ」というパラダイムシフトも起きています。
情報統制(管理)による"情報格差"が、人財に限界を与えていないか?という
既存の管理体制へのアンチテーゼが示されていました。
■神奈川県の事例
・e-かなネットアンケートシステム
・行政文書目録管理システム
・地域医療再生に向け医療カルテも検討中。
 診療情報が紙で眠っている。電子カルテ率は20%。
 マイカルテをクラウドに保存すれば世界のどこからでも参照可能になる。
■トヨタの事例
車は究極のモバイルデバイスであるとし、
chatterで、クルマがつぶやくSNS「トヨタフレンド」を構築。
社内でも、1万人以上でchatterを活用。
■Salesforce社内の事例
ある案件の、海外での担当者が誰かを探すのに、chatterで質問を投げかけたら、
少しでも知っている人から少しずつ情報が集まってきた。
助け合い精神が上昇中。
昔は1件のポストに平均1件のコメントだったが、
今はコメント数が上回るようになった。
chatter上での検索を今までのシステムにたとえると、
全社員のファイルやメール、教諭ファイルサーバーを検索しているのと同じ。
・chatter定着化の3原則。
 1、トップの参加。SFではマーク・ベニオフCEOが率先した。
 2、運用ルール。目的を明確化する。業務のみ?親睦OK? 
   Salesforce社内では業務利用のみだが、カレーのグループが一番盛り上がった会社もある。
 3、活用促進活動
   成功事例の紹介。チャターを通じての発信。ガイダンス実施。
   リーダー的立場の人に利用を促す。
   未回答のポストに対して解答コメントをつけるよう、有識者に(チャター外で)お願いしに行く。
なお、マーク・ベニオフCEOは、社内のある集まりで、
chatterを使っていない人を立たせたことがあるそうです。

続きを読む

Cloudforce2011 Japan 【前編】

日付としては前回のKintoneの記事よりも前になるのですが、
2011/12/14(水)、15(木)に、芝公園のプリンスタワーで開かれた、
「Cloudforce2011 Japan」というSaleforceのイベントに行ってきました。
Salesforceとは、簡単に言えばCRM(顧客管理)やSFA(営業支援)を中心とした
クラウド上のWebデータベースサービスです。
デフォルトの機能に、ユーザー(要管理者権限)が自分で自由に
大小さまざまな機能追加を行えることが特徴です。
初日は、マーク・ベニオフCEOによる基調講演とセミナーを一つ聞いたのですが、
Salesforceの機能的な説明というよりは、facebookやtwitterに代表されるような、
「ソーシャル革命」について、多くの時間が割かれていました。
もちろん、それにSalesforceがどう対応して行くのか、という説明も付随しますが。
アラブ・北アフリカ各所の反政府運動における、「Facebook有難う」という落書きの写真を見ました。
これまで、「IBMありがとう」だとか「Microsoftありがとう」というような落書きはありません。
これは、昨今の「ソーシャル」なサービスが、社会に与える影響の大きさを物語っています。
ネットを通じて個人(社員および顧客)がソーシャルに繋がることが当たり前になった現在、
会社や製品がそれに乗り遅れてはいけないんですね。
(それらが分断されてしまうことを、ソーシャルデバイドと呼んでいました。)
そこでSalesforceでは、twitterのようなつぶやき機能である「chatter」
社外の人間とコミュニケーション出来るだけでなく、
facebookやtwitter上のの情報も取り込めるようになっています。
ユーザーがfacebook上で入力した問い合わせに、サポート担当者がSalesforceで回答すると、
ちゃんとfacebookに反映されてる、というデモや、
facetimeを使って相手の手元の映像を送ってもらいながらサポートする、というデモが実演されました。
前職ではSalesforceを使っていましたが、chatterのサービス開始前に運用が安定していたので、
その運用を変えたくないがためにchatterは導入しませんでした。
食わず嫌いをせずに使っていればよかったかな、と少々反省しています。
chatterは、twitterと同じで誰でも無料でアカウントを作成出来ます。
別にSalesforceのユーザーである必要はありません。(別途有料コースもあります。)
そして「社内用twitter」としてクローズドな使い方が出来るだけでなく、
特定のグループを社外の関係者に公開し、コミュニケーションを取る事が出来ます。
(相手がchatterアカウントを持っていなかったら、招待メールを送ります。)
とにかく、ソーシャル革命に乗り遅れず、ソーシャルであることを活用すべきだ、という主張でした。
余談ですが、基調講演の様子はfacebookでも生中継されていました。
生中継といえばユーストリームだと思っていたましが、facebookも多くの機能を取り込んでいるようです。
一通りなんでも出来るサービスと、単機能に特化したサービス。生き残るのはどっちでしょうか・・・
サービス同士の連携が活発になったことも「ソーシャル革命」のポイントなのだと
個人的には思うのですが、この先どうなっていくのだろうか。
単機能に特化したサービスと、それらを統合して表示する機能しか持たない
ポータルサービスとに、明確に分化するという可能性も有るでしょうか・・・?
<つづく>

続きを読む

Kintone体験セミナー

サイボウズ社の新サービス「Kintone」の操作体験セミナーを受けに、水道橋へ行ってきました。
もちろん無料です。
Kintoneがいかなるものかは、こちら↓の紹介記事をご覧ください。
http://blogs.itmedia.co.jp/techneco/2011/11/salesforce-kint-3427.html
30日間の無料トライアルも可能なので、実際に触っていただくと分かりやすいかと思います。
なお、サイボウズ社はすでに「デヂエ」なる
Webデータベースサービスを提供していますが、
こちらはサイボウズOfficeの一部として、Kintoneとは別の進化をするそうです。
(これは、青野社長のツイッターからの情報です。)
結論から言いますと、有償のサービスとしては疑問符が付く、というのが正直な感想です。
決して高額ではないのですが。(1ユーザー月額880円)
私はSalesforceを使っていたため、どうしてもそちらと比較してしまうのですが、
無料のSalesforceFreeEditionと比べても、機能不足が目立ちます。
特に残念なのは、リレーションが組めないこと。何よりもこれが致命的です。
一つ一つのDB(MicrosoftOfficeAccessでいうところの「テーブル」)のことを、
Kintoneでは「アプリ」と呼ぶのですが、
アプリ同士を関連付けることが出来ないんですね。
中小零細企業の管理業務では、Excelによる「一覧表」が多用されていて、
ファイルが担当者のローカルPCの中だけに保存されていることが少なくありません。
IT活用レベルがもう少し上がると、ファイルサーバー上にエクセルファイル上げて
複数人数による同時編集が出来るようにしたり、
エクセルではなくアクセスを使ったりするようになるわけですが、
リレーションが組めないとなると、エクセルの代替にはなってもアクセスの代替にはなりえません。
他に気になったのは点は、
・ドロップダウンリストの選択肢群の中で、どれか一つをデフォルト値に定めることが出来ない。
・自動採番の項目が作れない。
・入力規則に反した入力がなされた際のエラーメッセージを自作できない。
といったところです。
もちろん、良いところもありました。
何と言ってもまず第一に、アプリ作成のUI(ユーザーインターフェース)が非常に分かりやすい。
Salesforceも十分分かりやすく直感的なUIなのですが、Kintoneはそれ以上です。
アプリに盛り込みたい項目(フィールド)を、左ペインの候補群の中から
ドラッグ&ドロップで配置するだけでいいんです。
この点は本当に素晴らしいと思います。
システム管理者の権限を有していない一般ユーザーでも、
自分で「個人用」のアプリを作成出来るんです。
これはなかなか興味深いですね。
意外と、そんなところから全社的に有用なアプリが産まれてくるかもしれません。
(個人用とは別に、複数人数で使用する「General」という概念がありますが、
 そちらのアプリは管理者権限が無いと作れません。)
また、作成したすべてのアプリに、デフォルトで「コメント」と「変更履歴」の機能が
付いてくるのもいいですね。
特に変更履歴においては、「その変更を元に戻す」ということも可能です。
また、ワークフロー(電子承認)チックなことが出来る「プロセス管理」という機能もあます。
デフォルトでは無効なので、あるアプリにおいてその機能が必要であれば「有効化」します。
高価で複雑なワークフローシステムよりずっと便利で簡易なので、
もしかしたらそういった製品を一気に「過去のモノ」にしてしまうかもしれません。
まとめます。
「アレが出来る、コレが出来る」というような"機能面"では、
無料のSalesforceFreeEditionにすら追いついていない点が目立つものの、
それは今後の機能追加で十分カバーし得ることです。
そういう表面的な部分ではなく、UIなど、もっと根本的な"サービスとしての設計"の部分、
足りないからといってそう簡単に「追加」出来ない部分については、
非常に洗練されています。
2012年3月にはリレーションも組めるようになり、
その後も3ヶ月単位でバージョンアップをして行くそうです。
現在はともかく、十分、今後に期待できるサービスです。
ただ、やはり無料のSalesforceFreeEditionに機能面がある程度追いつくまでは、
有料サービスとして公開しなくても良かったのではないかと思います。
ベータ版と称して無料公開し、多くのユーザーから機能追加要望を募る、
という手も有ったのではないでしょうか。

北朝鮮が混乱して一番困るのは中国。

北朝鮮の金正日総書記は、すでに一昨日死去していたとのこと。
後継者は金正恩で決まりだそうだが、まだ権限委譲は完了していないらしい。
誰かが「摂政」になるのだろうが、権力の空白期間に混乱が起きる可能性がある。
すると、中国(の人民解放軍)が乗り出してくるかもしれない。
中国にとって、北朝鮮の「衛星国」としての使い道・重要性に変わりは無いのだから。
北朝鮮がコントロール出来ない状態になって、
そこに米韓の手が伸びてくることを中国は最も嫌うはずである。
そうなった場合に直接の影響を受けるのは韓国だから、
ただでさえ海で睨み合っている中韓の緊張が一気に高まることになる。。。
日本はそれを利用して、韓国を間接的に後方支援するのと引き換えに
各種対韓交渉を有利に進めればよいのだが、
たぶん日本の外務省にそんな駆け引きは出来ないだろうな。
残念ながら。
スムーズに権限委譲が進み、何事も無かったかのように
「金王朝」が続くのであれば、まだマシなんだけど。

いまどきのビックリマン



近所のスーパーでビックリマンを目にして、思わず2つ購入。
今は「漢熟覇王」というシリーズ名になっている。
驚いたことに、45種類すべてがキラだとのこと。
パッケージにそう書いてある。
ビックリマンに熱中していた元小学生としては、ちょっと寂しい。
キラってのは、そうじゃないだろ・・・
稀少なればこそのワクワク感。
ダブった時のガッカリ感が、次への期待へと昇華して行く、あの感覚。
大人になると、そういう感覚を得る機会が減ると思う。
残念ながら今のビックリマンはそれを再現してくれるものではなかったが、
思い出の中のそれを再確認出来たという意味では、買って良かった。
こんな風に感じるのは、歳をとったからだろうか?
まだまだ、新しい「あの感覚」を探す力は十分あるはず。
失業以来たるんでいた生活に、ちょっと張りが出てきた。

第18回防衛大学校教授による現代の安全保障講座 (後編)

中編に続き、「アラブの春」についての解説です。
*************************************************
[6]国家の性格と民衆運動
■エジプト、チュニジア型
・国家としてのまとまりがある。
・国民の一体性が強い。
・軍の独立性が高い。為政者の私的な道具ではない。
■シリア、イエメン、リビア型
・国家としてのまとまりが弱い。
→民族や宗教・宗派、部族対立が強い。
・軍が国民から乖離。
→経済と権力の依存関係の中に組み込まれている。
*************************************************
[7]シリアの動向
■アサド体制
・イスラム教アラウィー派(人口の15%)中心の少数派体制。
・国民の多数はスンニ派。ほかにキリスト教諸派等。
・父アサド時代、スンニ派のムスリム同胞団を弾圧。(1982年のハマ事件等)
■シリアの地政学的重要性=アサド体制の特徴
・イスラエルとの(管理された)対立。
→1996年以降、ゴラン高原を挟んで対峙。
本気で戦争をする気はない。(一番安全なPKO?)
・イラン(非アラブ国家)との戦略的関係
イランにとってシリアはアラブ世界での唯一の同盟国
・ヒズボラ(レバノン)とハマス(パレスチナ)を支援。
■アサド体制が崩壊すると・・・
・多数派のスンニ派が権力掌握? ムスリム同胞団の発言力増大?
・国内の混乱→レバノンへ混乱波及?
・イランはアラブ世界への"橋頭堡"を喪失。
・ヒズボラが後ろ盾を失う。
・ゴラン高原でのPKO=UNDOF(国連兵力引き離し部隊)への影響?
*************************************************
[8]移行期の今後
■難しい移行期間
・新しい運動体/組織はどうなる:若者たちの経験不足
・社会全体が民主化に慣れていない。(政党政治の経験無し)
・民衆の要求にどう応えるか:限られたパイ
・軍の動向(民主化に応じるのか)
→軍が巨大なコングロマリットとなっていて、権益を守るため文民統制が効かない。
■イスラム主義組織の動向
・エジプトのムスリム同胞団
・チュニジアのナハダ
→10月の選挙で単独過半数取れず(4割)世俗2派と連立。
・強さ:草の根的基盤、唯一の組織化された組織、地方はイスラム色強い。
・弱さ:イスラム法導入への国民の危惧、政治改革で他の勢力が活動する余地が拡大

■アルカイダなどの過激勢力
・全体として弱体化(ビン・ラディンなど指導者の殺害)
・民衆の支持減少(イスラム過激派を「恐怖」とみる民衆の増加)
・ただし破綻国家(イエメン、ソマリアなど)で活動の場を得る可能性
*************************************************
[9]中東の全体的な情勢への影響
■エジプトの新しい外交姿勢
・反イスラエル的な国民感情に敏感
ただしイスラエルとの平和条約は維持。
破棄するとアメリカが黙っていない。維持していれば12億ドルの援助が貰える。
・シナイ半島の治安悪化(ガスパイプライン爆破テロ)
→国内全体の治安問題
・イランとの関係正常化の動き
■パレスチナ
・若者の運動活発化
・ファタハとハマスの暫定統一政府樹立合意(5月)
・9月に国連加盟申請(アメリカは強く反対)
■イスラエルの不安
・エジプトとの関係の冷却
・パレスチナへの国際的な支持増大
・シリアの動向
■イランへのプラスとマイナス
・エジプトとの関係改善の兆し
ムバラク政権との関係は悪かったが、
暫定政権になって変わるかもしれない。
・シリアの動向
イランにとってはアラブ世界への重要な橋頭堡なので、
シリアの現体制を見限って反体制派につくべきか否か迷っている。
現体制がいつまで持つか見通しが立たない。
・イラン国民への影響
■イエメン情勢
・アラビア半島のアルカイダ(AQAP)
・ソマリアのイスラム主義組織との関係(?)
以上です。
【参考】


by Google マップ

第18回防衛大学校教授による現代の安全保障講座 (中編)

前回の続きです。
本当は間にもうひとつの講演があって「3本立て」だったのですが、
特に興味のわかないテーマで集中力も切れそうだったため、出席しませんでした。
<2>中東で何が起きているのか -アラブ諸国の政治変動とその背景-
いわゆる「アラブの春」についての解説です。
*************************************************
[1]各国の情勢
■チュニジア(ジャスミン革命)
各国で起きている反政府活動の発端となったのはこの国です。
・2010年12月、青年が抗議の焼身自殺
・一気に反ベンアリ運動として拡大。
・2011年1月14日、ベンアリ大統領がサウジへ亡命。
■エジプト
・カイロで連日のデモ
・主要都市へ拡大
・2011年2月11日、ムバラク大統領退陣
 最後はアメリカから引導を渡される。亡命せず逮捕され、裁判中。
・軍最高評議会が実験掌握
 当初は、一定期間経過後に選挙を実施して民政に移管すると約束。
 予算などで軍に特別な権限を与える新憲法を導入しようとするなど
 権益維持の姿勢を見せたため、現在は軍に対してデモが起きている。
■リビア
・2011年2月から内戦状態
・2011年3月、国連安保理決議に基づき、NATO介入。
・2011年8月末、カダフィ政権崩壊。暫定国民評議会が実験掌握。
・2011年10月20日、カダフィ大佐死亡確認。
■シリア
・2011年3月から激しい反政府デモ
・アサド政権による弾圧継続中。国連の推定によれば、3500人以上が死亡。
 (外国の報道陣はシャットアウト中)
・内政干渉しないのが建前だったアラブ連盟の各国も、
 国内からの批判を恐れシリアには積極的に介入。
 シリアの加盟資格を停止し、経済制裁中。
■その他
バハレーン、イエメン、サウジ、ヨルダン、モロッコなどで
体制転換や政治改革を求める動き。
*************************************************
[2]現状
■体制移行中
 チュニジア・・・10月に制憲議会選挙実施)
 エジプト・・・・11月28日、国民会議選挙実施
 リビア・・・・・10月に暫定政府樹立、8ヶ月以内に制憲議会選挙実施予定
■一定の改革やバラマキ政策で鎮静中
 ヨルダン、サウジ、オマーン、モロッコ
■国家による徹底的な弾圧
 バハレーン(王家はスンニ派で、国民の7~8割はシーア派。対立は昔から。)
■デモと暴力の拡大
 ・シリア
 ・イエメン(背景には、統合して20年しか経っていない南北の対立もある)
*************************************************
[3]共通の背景:民衆の怒り
・高い失業率、富の偏在、為政者一族による権益独占、腐敗、汚職、不正疑惑etc
 社会主義的な国有企業が経営破綻し、民営化したとします。
 その場合、権力者の親族やその友人などに、安値で払い下げられます。
 そして効率化を行った結果、町には失業者が溢れます。
 結局一部の人間にしか旨みが無いため、不満が募ることになります。
・基本的人権の侵害、政治参加の否定
・「世襲共和制」による閉塞感(シリア、エジプト、リビアなど)
・警察国家(秘密警察による恐怖政治)
・ばら撒き政治の失敗(石油収入の分配の失敗)
*************************************************
[4]新しいアクター:若者の運動
・若者たちがデモや抗議行動呼びかけ(既成の政党やイスラム主義組織とは別。)
・スマートフォンなどを駆使したネット上での活動
 新しい大衆動員のツールであり、討論の場でもある。
 フェースブック、ツイッター、Youtubeなどで、プロの報道陣がいない場所からでも
 起きた事がすぐに世界中へ発信される。
 "シビックジャーナリズム"と呼ばれます。
・衛星テレビ(特にアル:ジャジーラ)の役割
 これらの若者の運動は突然出てきたものではない。
・エジプト:イラク戦争反対運動、ムバラク大統領後継者問題をめぐる運動、
 労働運動などが続いていた。
・国際的な非暴力反体制運動とのつながり
 エジプトの反体制派は、セルビアの反ミロシェビッチ体制運動家から
 反体制運動のトレーニングを受けたそうです。
 http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/02/16/revolution_u&page=full
 若者は国境をすぐ越えるしネットで情報もすぐ手に入れる。
*************************************************
[5]オバマ政権の3つの対応
・即時体制移行を要求:チュニジア、エジプト
・改革を要求:バハレーン、イエメン
・軍事介入:リビア
・シリアは?
 EUなどと共に経済制裁。
 しかし、国連安保理では中国とロシアが強く反対し、
 軍事介入は無し。(安保理議長声明のみ)
 
 中国とロシアが欧米の軍事介入を嫌うのは今に始まったことでは有りませんが、
 シリアに権益を持っているので欧米にリードされたくないそうです。
 中国は既にリビアでだいぶ損をしているそうです。
 なお、中国企業は他国へ進出して工場を建てても、
 中国人労働者を雇うので現地の雇用は増えず、摩擦もあるそうです。
 
・軍事介入に関するオバマの原則(2011年3月28日 国防大学演説)
 - 虐殺防止は米国の国益であり、そのための軍事介入は有りえる。
 - 軍事介入は単独では行わず、国連の授権と国際協調が前提。
 - 軍事力による体制転換はしない。
<後編へ続く>