月刊アイソス 2010年8月号(No.153) 感想(2)

2010/08/01の記事の続きです。
中野医療器株式会社のQMSの(現状の)問題点は他にもあります。
外注部品の不良率が改善しない。
 ・コストダウンの要求が厳しく、外注先を価格の安いところへ変えた。
 ・たくさん作って利益を確保するのに精一杯で、改善している暇などないのだろう。
  「不良が見つかったら返品してくれればいいですよ。」というスタンス。
 ・たまに指導にも行っているが、効果は無い。
 ・不良品は受入検査で止めている。
  そこで”見えないコスト”がかかっているのは承知している。
この点は、審査員からも「何とかするように」と言われているそうなのですが、
はたしてそうでしょうか?
「安かろう悪かろう」というのは、ある意味経済の原則であり、避けがたいものです。
たとえ信頼できる外注先であっても、受入検査をしないわけにはいかないので
そのコストは減ることはあってもゼロにはなりません。
ただ、受入検査で不良を発見できなかったら問題です。
外注部品を自社製品に組み込んで、完成してから出荷直前に不良に気付いた場合、
組み立てにかけた手間と時間が無駄になります。
これほど悲しい無駄はありません。
検査の手間というのは、流通の過程で、
結局どこかで誰かが負担しなくてはいけないものです。
それを外注先にはさせず、自社で負うからその分価格が安くなっているわけです。
そういう意図ではないでしょうが、事実としてそうなっています。
中野医療器がまずやるべきことは、外注部品の不良率が高いことで、
どれだけのコストが自社内に発生しているかを、ちゃんと把握することでしょう。
「返品作業にかかる手間」も含め、「不良率が○%以内だったら発生しないはずのコスト」
を計算してみると良いと思います。
その結果、「現在の購入額は十分安く、検査作業を自社で負担しても黒字である。」
という答えが出たのであれば、何の問題もありません。
審査員からあれこれ言われす筋合いも無ければ、
自社の問題として改善する必要もありません。
逆に、「赤字だ」という答えが出たのであれば話は別です。
外注先と、
「うちに納入する前にこれだけの検査はちゃんとやってくれ。
 そのために価格が○円上がっても良い。」
と交渉をすべきです。
それが受け入れられ無かったら、受け入れてくれる外注先を探せば良いのです。
不良品対応というのは通常業務の中に埋没しがちで、
それゆえに「見えないコスト」と呼ばれたりすることもあります。
それをリアルな数字として計算するのは大変だと思いますが、
逆を言えばその大変な事をやってこそ「マネジメント」なわけですから、
なんとか取り組んで欲しいと思います。
ここで大事なのは、審査員の言うことを
全て真に受け、プレッシャーに感じる必要は無いということです。
別に規格は「外注品の不良率を○%以下に抑えなさい」なんてことを
要求はしていません
から。
もちろん低い方が望ましいのは当然ですが、
「では、どれだけ低ければ十分だと言えるのか?」は、
企業が自身の判断で決めて良いことです。
(外注先に「何らかの選定基準」を定めることは、規格要求事項の中にあります。)
だからといって、さしたる根拠もなく「今期は外注不良率○%減!」なんて
“もっともらしい”目標を立ててしまうと、
自分で自分の首を締めることになるので注意が必要です。
(目標を立てた後で、さらなるコストダウンが要求される可能性もありますから。)
「仕事の成果」とは、多くの場合複合的なものです。
一部だけを切り取って目標化すると、まず上手くいきません。
「目標の立て方」自体、本当は結構奥が深いはずなのですが、
そこを意識している企業は意外と少ないのかもしれません。
つづく。