ISO認証審査のあるべき姿とは?<番外編> ~ISOとは別の”審査”~

大地を守る会」という団体をご存知でしょうか?
生協と似ていて、有機野菜や自然食品の宅配サービスをしています。
以前、TVでここの「契約農家への抜き打ちチェック」が紹介されていました。
アポなしで契約農家を訪問し、農薬の使用量・使用時期・用途
契約通りか否かを調べるのです。
(これらの情報は消費者へ配られるカタログにも記載されます。)
帳簿を見て農薬の購買履歴をチェックし、
気になるものがあれば説明を求めます。
除草剤や殺虫剤を使わない契約の場合、実際に畑に行って
雑草が生えていて虫が付いていることを確認します。
そんなチェックを抜き打ちで何度もやっているのであれば、
消費者としては大変安心(信頼)できます。
(当然ですが、近所のスーパーより割高なうえに品数も少なく、生産量も限られています。)
ISOのような認証審査と大きく違うのは、
「審査する側へお金を払っているのは、受審側ではなく、消費者である。
という点です。
大地を守る会としては、農家の何らかの違反を見逃せば、
消費者からの信頼を失い、自分のビジネスが立ち行かなくなります。
だから受審側(農家)へは“消費者の代理人”として厳しい態度で臨むでしょうし、
それを受け入れる覚悟のある農家だけが契約に応じます。
類似のサービスは大地を守る会の他にもあるのでしょうが、
本来、「商社」というのは、程度の差こそあれ、
すべからくそのような機能を有しているべきです。
ある程度規模の大きい経済社会では、消費者は、
有名な大手メーカーを除き、なかなか生産者を選べません。
買い物の直接の相手は「小売業者」ですから、
「あそこが扱っている物なら安心だ。」という判断をすることになります。
つまり「信頼性チェック作業の代行(集約)」が行われるわけです。
同じ作用は、小売店が卸業者から仕入れる際にも働いていることでしょう。
誰がやるのかはともかく、流通のどこかの段階で
必ず誰か(あるいは皆)が「信頼性チェック」をしているはずです。
しかし、チェックを受ける生産者は、取引先ごとにチェックを受けるのは面倒です。
(チェックの基準は取引先ごとに違うはずですし。)
商社も、全ての生産者をチェックするのは大変です。
そこで、究極の「チェックの集約」としてISOがあります。
(そう意図して作られたのかどうかは分かりませんが。)
ISOなら世界共通の基準ですし、チェックも年一回で済みます。
たしかに生産側、仕入側の双方にとって便利ではありますが、
万能ではありません。
広範に適用可能であることを目指しているため、
チェックの内容はやはり大味であり、
末端消費者一人一人のニーズに応えきれているとは言えません。
やはり、流通業者(最終的には小売店)の判断での選別は重要です。
また、”立場の違い“もあります。
チェックと言うのは、「チェックする側」と「応じる側」
の2者によって行われるわけですが、現在のISOにおける認証機関は
「仕入側の、消費者に代わって生産者をチェックする」機能ではなく、
「生産側の、チェックに応じて自社体制を説明する手間を集約する」機能として
存在していると言えます。
生産者側から対価を受けて審査しているわけですから。
審査機関としては、対価を払ってくれるのは生産者(受審側)ですが、
同時に自らの説明により、仕入側、ひいては消費者を納得させなくてはいけません。
消費者からの信頼を失えば、結局は生産者も受審しようと思わなくなるでしょう。
現在のISOがそれだけの価値を発揮しているかは、少々疑問です。
10年後、20年後には、果たしてどうなっているでしょうか・・・