月刊企業実務 2010年8月号(No.679) 感想

こんばんは。アイソス8月号の感想を書き終えないうちに
9月号が届いてしまってやや焦り気味の柴田です。
とりあえず9月号は見なかったことにして、
今回は月刊企業実務8月号(No.679)の感想を書きます。
(たぶんこれも数日中に9月号が届きます・・・)
取り上げる記事は、連載企画である
<管理部門の「業務成果を改善」するマネジメント術 第11回> P86~88
です。
装飾品商社であるA社は、創業以来、受注拡大を最優先し、
時流にのって急成長。 しかし、その反動が・・・
というお話です。
急成長した企業において、組織(管理)体制がその規模にマッチせず、
いたるところに無駄が発生してしまうのはよくあることです。
記事内では、「(A社における)その最たるものが在庫管理」としています。
これまで、倉庫の(=在庫の)管理は営業部が担当し、
仕入先との価格交渉や入荷(検収)、出荷といった手続きも
各営業マンが営業業務の片手間に行っていました。
その結果、以下のような弊害が出てきました。
(1)入出荷の記録忘れが多いため、在庫数のデータと実態が乖離し、納期遅れが頻発
(2)受注したのとは違う商品を顧客に届けてしまう出荷ミスが頻発
(3)各営業マンがバラバラに仕入をしていたため、同じ仕入れ先に対しても、
 スケールメリットを活かした価格交渉が出来ない
(4)万が一営業マンが架空発注をしたとしても、チェック出来ない
(5)所定の伝票に依らない口頭の仕入発注もあり、経理側で支払予定額を把握できない
当然、顧客からのクレームが相次ぐようになりました。
実際、社長が久しぶりに倉庫を訪れてみると、
不良在庫が溜まり、足の踏み場もないほど乱雑に段ボールが積み上げられ、
整然と整理整頓された以前の姿とは様変わりしていたそうです。
そこで社長は、いままで売上一辺倒で管理部門を軽視していた姿勢を改め
物流課」と「購買課」を新設することで上述の問題を解決しました。
(いかにも管理部門のための雑誌だなぁ。)
・・・というのが記事前半の要旨です。
(後半では、実際にどう物流課と購買課を機能させていったのかが書かれています。)
ここまで読んで、私は非常に違和感を覚えました。
「この会社には”営業部長“はいないのか!?」ということです。
もし社長が営業部長を兼任していたとしたら、事態が悪化する前に
気付いていたはずでしょうから、おそらく独立したポストだと思われます。
上述の問題点の、少なくとも(1)・(2)・(3)の3つについては、
「営業部員がやっていることで、(別の、あるいは全体の)営業部員が被害を受けている。」
という構図が当てはまります。
つまり、原因と結果が「営業部」内で完結している事象だ、ということです。
そのような問題を解決するために社長が出てこなくてはいけないのだとしたら、
営業部長は一体何のためにいるのでしょう?
通常、多くの会社では、営業成績を上げることが営業部長に課せられた至上命題です。
その為には、受注拡大を図る一方、言うまでも無く”ロスを抑える”こともまた重要です。
顧客からのクレームの情報は、当然営業部長のところにも届くことでしょう。
そしてその原因が「営業部員の在庫管理の甘さ」にあったのだとしたら、
その解決に真っ先に乗り出さなくてはいけないのは、営業部長その人のはずです。
解決の手段は何でもいいんです。
「部下達に、入出荷帳の迅速かつ正確な記載を徹底させる。」でもいいですし、
「在庫管理を専門とする新部署の設置を社長に訴える。」でも構いません。
別に、営業部内だけで解決しなくてはいけないなんてルールはありませんから。
大事なのは、そういった課題解決行為に営業部長自身が主体的に乗り出すことです。
営業部員がやったことで他の営業部員が困っているのに
当の本人達(およびその長)が問題を放置している状態なんて、
営業部外の人達から見たら馬鹿みたいじゃないですか。
(3)については、営業マン一人一人は大して問題だとも思っていないかもしれません。
(問題の存在そのものに気付いていない可能性すらあります。)
しかし、営業部全体を見渡し、その成績に責任を持つ営業部長にとっては、
間違いなく「自分事」のはずです。
A社が抱える本当の問題は、決して、
「規模に見合った管理体制が整っていない」ことではありません。
ズバリ、
「社長の分身として各部署を管理監督する中間管理職“が育っていない」ことです。
そのことを改善しない限り、各部署内で起こる問題に対し、
この先もいちいち社長が乗り出して解決しなくてはいけません。
A社が今後も継続的に成長を続けるのであれば、
(そのこと自体は喜ばしいことのはずなのに、)
いずれ破綻することは自明です。
社長一人の目と手が届く範囲は限られていますから。
なお、(4)と(5)の問題については、営業部以外の部署も絡んだ事象ですので、
営業部長を含め、営業部内の人間にとっては「それが問題である」という
認識すらなくても仕方がありません。
そういった問題を解決するために、部長より上の人間
(A社の場合は社長)が乗り出してくることは普通の事だと思います。