今回の記事は、2009年2月8日の「管理と監視」の"改訂版"に当たります。
あの記事においては、マネジメントシステムの構造を「2層」として捉えていましたが、
最近、考え方をバージョンアップしまして、「1核+3層」としました。
現場の業務が「核」で、それを取り巻くように
3層の「マネジメントシステム」があるという考え方です。
※「品質」を直接産み出すことができるのは現場だけですので、
現場を中心に据えることは重要なことです。
ISOの規格条文を読む限りでは、それら3つは区別して記述されていません。
全て、「マネジメントシステム」という名称で呼ばれています。
実際には別の物を指しているのですが、行間からそれを読み解かねばなりません。
これが、ISOを分かりにくくしている元凶だと思います。
本当は、当たり前のことを言っているに過ぎないのですが。。。
まず、規格上の「マネジメントシステム」の定義を見てみましょう。
日本規格協会編 「対訳ISO9001:2008」のP213には、
「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」とあります。
実はこの時点で、すでに2層構造なんですね。
1、初めに方針ありき。
2、その方針で、達成したい目標がある。
3、目標を達成するための手段(としてのシステム)がある。
マネジメントシステム全体はこの3要素から成立し、
3番目の要素はそれ自体が独立した(下層の)マネジメントシステムでもあるわけです。
これらを区別せずに、一言で「マネジメントシステム」と呼んでいると、
自然に理解出来るはずのものも、理解できなくなってしまいます。
また、規格はこうも要求しています。
4.1一般要求事項 「品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善しなくてはならない。」
この文章も、ちょっとおかしいと思いませんか?
どんなシステムであれ、そのシステムの有効性を評価し改善するのは、
そのシステムよりも一回り大きな枠組みでなければいけませんよね。
ウィリアム・エドワーズ・デミング博士も、
「システムは自分自身を理解できない。変革には外部からの視点が必要である。」
とおっしゃっています。
いわゆる「マネジメントシステム」の下層と上層にも「マネジメントシステム」があることを
お分かりいただけたでしょうか。
今晩はこの辺で・・・ to be continued.
月: 2009年10月
元本返済猶予法
亀井金融相が打ち出している、通称「モラトリアム法案」ですが、
はたしてどこまで効果があるでしょうか?
すでに以前から、金融庁から銀行へ、リスケの申し出にちゃんと対応するよう、通達は出ています。
今回の法案も強制力は無く、努力義務を課すだけだそうですから、
「通達のパワーアップ版」ぐらいの位置づけになるのでしょう。
リスケに応じるには、銀行にもメリットが無いといけません。
「今のままでは倒産してしまい、貸した金を取りっぱぐれるが、
リスケに応じれば、その間に経営改善し、長い目で見ればちゃんと回収出来る。」
そういう現実的な計画がなければ、誰がリスケに応じるでしょうか。
貸す側の立場になってみれば、子供でも分かることです。
そして、リスケを必要としている企業であれば、とっくに経営改善案を作成し、
銀行に提出してリスケ交渉をしているはずです。
今回の法案によりメリットを享受できるのは、
「十分現実的な経営改善案を立てているにもかかわらず、
頭の固い銀行に相手にしてもらえなかった企業」
に限定されていると思います。
これまでリスケを考えていなかったのに、この法案を受けて
「じゃあうちもリスケしてもらおうかな?」
などと考える企業があるとは思えません。
応じる銀行だって、「取りっぱぐれるよりはマシか」という認識でしょうし、
今後の取引にも差し支えるでしょうから、
リスケしないで済めばそれに越したことはありません。
おそらく、法案が可決したとしても、
「中小企業がこぞってリスケの申し出をしに銀行を訪れる」
ようなことはないはずです。
効果はごく限定的なものになると思います。
そして、延命してもらえた企業が結局破たんしたとしても、
亀井さんが責任をとることは無いでしょう。(コレハマチガイナイ!)
そもそも、リスケや救済法案なんて、しょせんは他人の胸先三寸。
そんなものはアテにならないからこそ、常に経営改善を心がけるのが経営者の仕事のはずです。
それが出来なければ、可哀想ですが退場していただくしかありません。
それが市場経済と言うものではないでしょうか。
銀行が特定の企業を選り好みして融資しているのならともかく、
基本的には、日本中の企業が同じ経済環境の下にあるはずです。
同じ条件下で潰れる企業と生き残る企業が分かれるのであれば、
それは潰れるべくして潰れたのであり、生き残るべくして生き残ったということなのでしょう。
知的体力があるのなら・・・
こちらのサイトをご覧ください。
(ISO9001を取得し、不良減、クレーム減に成功した事例です。)
http://www.n-souken.com/news/news091003.html
この西沢先生のサイトは大変勉強になるため、日ごろからよくチェックしているのですが、
たま~に「ひっかかる」ことがあります。
今回もちょっと腑に落ちない点がありました。
最初から、「注意します」などの精神論に逃げ込まない対策が出来たことは、素晴らしいと思います。
お世辞でも嫌みでもなく、本っ当にそう思います。
(認証を取得していても、それが出来ない企業は多いですから。)
しかし、「真因の究明」を最初から出来るぐらい「知的体力」とやらがある企業だったら、
それに続く「組織的な対策」なども出来てた筈だと思うんですよね。
であれば、認証取得後に不良やクレームが激減するなんてことは無い筈です。
「いままで本気で仕事をしてなかっただけなんじゃないの?」
と、冷たい突っ込みを入れたくなりました。
知的体力と言う「素質」を十分に持ちながらも、不良やクレームの低減を出来ずにいた会社が、
ISO導入によって、足りなかった「何か」が補完され、それを実現出来たということでしょうか?
だとしたら、その「何か」とは一体何だったのか・・・ 気になります。
ISOの「外圧効果」が、社員に本気で仕事をさせたのだとしたら、
トップのリーダーシップが致命的に足りなかったということになりますね・・・
経理・会計とISO
本屋の財務・会計コーナーに行くと、よく「経営者のための決算書の読み方」みたいな本があります。
つまり、そういう本でも読んで勉強しないと、なかなか決算書を理解できないということです。
(簿記を齧ったことのある人なら分かると思いますが、複式簿記の考え方はちょっと特殊なので。)
その一方で、「決算書は経営の役に立たない!」という内容の本も見かけます。
財務・会計コンサルタントのブログなどを見ると、その手の記事が多く見つかります。
センセーショナルな印象を受けますが、考えてみれば当然のことなんです。
税法とは、あくまで税金を取るための計算式であり、
そもそも企業活動を採点することを目的としていませんから。
その結果として作られる決算書に、企業の実態が反映されているなんて世迷い言を信じてはいけません。
よく、「決算書は企業の通信簿」と言いますが、ほぼ嘘です。
(いったい誰が言い出したんでしょうね?
日本中の企業の業績がほぼ同じ基準で計算されるので、比較分析には役立つかもしれませんが、
その企業自身に最適化されたものではないはずです。)
ところが、社内の経理社員や税理士までがそう信じているケースがあるため、問題になります。
経営者の感覚と乖離した決算書が出来あがるのは仕方ないし、
税金を正しく計算するのは大事なことです。
でもそこで終わってしまってはいけません。
ちゃんと経営の実態を表し、戦略立案に役立つような資料も作らねばなりません。
しかし、「税法にしたがって正しく計算をすること」だけが自分の仕事だと思っている経理社員や税理士は、
本当に経営に役立つ資料を経営者に提出しようなどと夢にも思いません。
そういう資料を作れと経営者に言われてもチンプンカンプンで、話がかみ合うことはないでしょう。
そういう”計算屋さん”は、税務署からお給料を貰ったらいいと思いますYO!
これは、情報システムを滞りなく運用することしか考えておらず、
エンドユーザーの利便性や投資効果、今後のIT投資戦略などを考えようとしない情報システム部員にもあてはまります。
つまり、「仕事のための仕事」になってしまっているんですね。
平社員ならまだそれでいいんですけど、課長部長クラスがそれではいけません。
「何のための仕事なのか」をしっかり認識しないといけません。
さて本題に入りますが、まったく同じことがISOにも言えるんですね。
よく、「ISOを取って書類の量が増えた」とか、「ISOのための仕事になっている」という声を聞きますが、
別に今に始まったことではないということに気付いたのです。
同じ構図が、ISOが広まるずっと以前から、経理部を舞台に繰り返されてきていたのですね。
人間って進歩しないなぁ・・・ (溜息)
この「仕事のための仕事」というのは、とかく間接部門の社員が陥りやすい落とし穴です。
何のための仕事なのかを考えずとも、とりあえず目先の「作業」をしていれば、
仕事をした気になれますから。
(正直、私も人のことをあまり言えません。。。 社長ゴメンナサイ。)
ISOを取得しようとする企業が、「ISO推進室」や「ISO事務局」なる組織を新設する場合、
間接部門を中心に人員を集めるケースが多くは無いでしょうか。
もしその人員が「仕事のための仕事」病に罹っていたとしたら、
その時点でマネジメントシステムの形骸化は約束されたようなものです。
もちろん、そのような人員を任命した経営者に責任があることは
民明書房級に言うまでも無い。
文書の意味を見直そう <3> 「品質目標」 補強篇
2009/10/03の続きです。
私は日ごろ、ISO関係のコンサルタントや実務担当者のブログを多く読んでいるのですが、
その中でたまたま見つけた「品質マネジメント8原則」というものが、
私の持論をちょっと違った角度から理論的に補強してくれることに気付いたので、
補強篇を書くことにしました。
恥ずかしながら、この「品質マネジメント8原則」というものを
これまで全く知らなかったのですが、
こちら↓のサイトの説明を見ると、規格の"精神"をうまくまとめたものと言えそうです。
http://www.aims.co.jp/hiketu/8principle.htm
まさにマネジメントシステムの土台です。
これからISO9001取得を目指す経営者の方は、
ヘンテコな日本語で書かれた規格条文を読んで首をかしげる前に、
この原則をしっかり消化するといいと思います。
さて本題に入ります。
上記サイトの「原則1.顧客重視」のページをご覧ください。
「顧客重視とは、顧客のゴキゲンをとることではなく、
顧客もマネジメントシステムに取り込むこと。」
「『顧客情報』は売上の中にある!」
とあります。
これは、私が10/03の投稿の最後に書いた、
>>なお、企業が企業活動全体を通して世の中にアウトプットしているモノに対する世の中からの評価、
>>つまり企業の存在価値の総合評価は、
>>最終的には「中長期的な売上高」と「リピーター率」の二指標に現れるものだと考えてます。
に通じる考え方です。
会社の業務は、顧客のために行われます。
直接的であれ間接的であれ、どんな業務も「顧客のため」という一つの焦点があるはずです。
そして顧客は「対価」を通してその企業の業務を評価します。
その結果として継続的に利益をあげられる企業だけが、企業として存続することを許されるのです。
これは、ISOだのQMSだのを語る以前の、
人類の歴史に企業というモノが誕生した時から変わっていないはずの大前提です。
企業を採点する絶対的な存在は、審査機関でも株主でもなく、顧客だと思います。
どんなに真面目に是正処置をやっても、いくら詳細な顧客アンケートを取っても、
どれだけ優秀なコンサルタントから助言を受けようとも、
形の上ではマネジメントシステムが完成しても、
本来の目的である「企業の成長」が実現するとは限りません。
是正処置の効果は、取り組む人間の能力にも左右されますし、
全ての顧客が本当に正しい情報をアンケートに記述してくれるとは限りません。
そういった業務をしっかりやった"つもり"でも、審査には受かるでしょうが
企業が成長するとは限りません。
企業にとって客観的かつ絶対的な指標があるとしたら、
それは"顧客の支持"が否が応にも反映される、「中長期的な売上高」と「リピーター率」です。
(あくどい商売をすれば、短期的に売り上げを伸ばすことは誰にでも出来るでしょうから、
あえて「中長期的な」としておきます。)
こんな素晴らしいものを、マネジメントシステムに取り込まない手はありません。
短期的な目標として「顧客満足度アンケートの<満足>の数」を数えるのはいいでしょう。
しかし、そのアンケートの手法が本当に正しいかどうかは、どうやって計測するのですか?
それを考えずにいくらアンケートを取っても、茶番でしかありません。
もし、「アンケートの結果は上々なのに、リピーター率は低いまま。」
という状態に陥ったとしたら、それはアンケートの取り方が間違っている証拠です。
ピアノは、ドの鍵盤を押せば、基本的にはドの音が出ます。
しかし時間が経つと弦が緩み、音程がずれます。 そのため、定期的な調律が必要です。
音程がズレているにも関わらず、
「ドの鍵盤を押しているのだから、ドの音が出ているはずだ!」
などと言い張ってもしょうがありません。
アンケートの結果がどうであれ、売上とリピーター率が低ければ、
それは顧客満足が低いということなんだと思います。
現実から目をそらしてはいけません。
アンケート手法の見直しが必要です。
そういった指標は、売上高とリピーター率の二つだけではないかも知れませんが、
とにかく、主観的でも相対的でもない、信頼できる確かな"拠り所"を見つけて
それを足がかりに「マネジメントシステムの調律」を行う必要があります。
でなければ、マネジメントシステムは形骸化してしまいます。
マネジメントシステム自体の有効性を継続的に改善する、とはそういうことなのだと思います。
なお、「中長期的な売上高」や「リピーター率」は、
あくまでも「中長期的な企業の総合評価」であり、それ自体は短期的な目標としては不向きのはずです。
(業種業態によっては適しているのかもしれませんが、慎重に考える必要があります。)
なにしろ漠然とし過ぎていていますので、たとえ良い結果が出来たとしても、
それが製品の良さによるものなのか、営業マンの努力によるものなのか、
はたまた接待の質によるものなのかが見えて来ません。
それらは個別に計測し、フィードバック(改善)も短期的にやらねばなりません。
「中長期的な売上高」や「リピーター率」は、「個別の短期目標の調律」に用いるのが良いでしょう。
認証ビジネスとは
企業が認証を取得しようと思ったら、当然ながら、外部の審査機関から
審査を受ける必要があります。
認証取得後にも、定期的に受審する必要があります。
この外部審査で恥をかかないよう、規則を守ろう、描くべき書類をちゃんと書こう、
といった意識が組織内に芽生えます。(ホントか?)
これを”外圧効果”と呼び、ISOなどの認証を取得することのメリットとして挙げられますが、
私はこの効果に大変懐疑的です。
そもそも認証とは、マネジメントシステムをしっかり運用できている企業に対して与えられるものです。
審査という外圧効果を前提として成り立っているマネジメントシステムは、
本来、認証に値しないはずです。
しかし、審査自体が外圧であるため、審査を通じてそれを見抜くことは理論上不可能です。
すると、完全な審査というものは存在しないことになってしまいます。
認証ビジネスって何なんだろうなぁ、と、ちょっと虚しくなりました。
文書の意味を見直そう <3> 「品質目標」
マニュアル、品質方針ときて、3つ目のテーマは品質目標です。
ヒネリも何もなくてすみません。
その分は内容で勝負・・・ できてるでしょうか?
ISO9001における品質目標には二つの意味があります。
「品質方針の実現度合いの目標」と言い換えて問題ないものと、
「各製品プロジェクトにおける目標」です。
このブログでは、前者を取り上げたいとおもいます。
品質目標として、「クレーム○件以下」などを掲げている企業がありますが、
私は今まで、このような減点法的評価を前提とした
ネガティブな目標設定を、どうしても好きになれませんでした。
測定期間中に上限値をオーバーしてしまうと、
その時点で未達成が確定してしまい、モチベーションが下がります。
下手をすると、クレーム隠しにも繋がります。
品質目標に限らず、「目標」というものはもっとポジティブな指標の方が良いと思っていたのですが、
その理論的根拠が見つからずにずっとモヤモヤしていました。
最近、きわめてシンプルな理屈でその根拠を説明できるようになったので、
今回このブログで発表いたします。
「クレーム数」などのネガティブ指数は、「品質方針からの逸脱度」を表すものであり、
「品質方針の達成度」を表すものではないんですね、はい。
企業活動の本質は、「生産的活動」です。
世の中に対し、何らかの付加価値を産み出すことから全ては始まります。
クレームのような「ロス」を抑えることも大事ではありますが、第一義ではありません。
品質方針に従ってどれだけの付加価値を産み出せたのか、そちらの方が重要です。
そしてそれは、"減点法"で評価できるものではないはずです。
「逸脱度」しか測定しておらず、「達成度」の測定をしていなければ、
ある意味不適合ではないでしょうか。
(偏った解釈かもしれませんが。)
順番としては、
(1) 品質方針を定める
(2) 「品質方針を実現できていれば、その程度が○○の指数として表れるはずだ」と言えるような
測定指標を考える。
(そしてそれは、加点法によるポジティブな指標であるべきです。)
(3) その指標が「この域値を超えていたい」と思うような目標を定める。
となります。
正確な意味と手順を深く考えず、、品質方針と品質目標を別々に立ててしまうと、
整合性が取れていないばかりか
「この目標って、どうやって測定したらいいのかな?」
と悩むことになります。
なお、企業が企業活動全体を通して世の中にアウトプットしているモノに対する世の中からの評価、
つまり企業の存在価値の総合評価は、
最終的には「中長期的な売上高」と「リピーター率」の二指標に現れるものだと考えてます。