エーワン精密とは、製造業の工場にある工作機械で使用される
「コレットチャック」なる道具を製造している企業です。
少量からのオーダー受付と短納期を武器に、市場(推定20億円)の60%強を占めています。
創業者である梅原勝彦氏(現取締役相談役)は名経営者として名高く、
創業以来高利益率を維持しています。
梅原氏の著作を読んで以来興味があった企業で、
昨秋からの不況で株価が落ち込んだのを機に株主になり、(1株だけですが)
今回初めて株主総会に参加してまいりました。
会場は地元の商工会議所会館。
ホールは約100名程の席が用意されていましたが、おそらく出席者は20名弱。
大企業でなければ、そんなもんなんですね。
(株主数は1,229名。発行済株式は15,000株。)
<気付いた点等>
・会社側の出席者は役員4名、監査役2名。その後ろにスタッフ5名。
役員は、創業者を除き見た目40~50代。監査役の2人はおじいちゃん。
議長は社長が務める。
・最初の、役員一同のお時儀のタイミングがバラバラ。
揃ってた方がベター。
・開会の前に、議長(社長)より「録音してます」宣言。
・招集通知書に載っているバランスシートの、「繰越利益剰余金」は、
株主配当を引く前の額。
総会で配当額が承認され、それを引いた数字が本当の剰余金となる。
<質疑応答> ※メモと記憶によります。回答者は特記が無い限り全て林社長です。
Q:有価証券評価損が、経常利益と同じくらい(!)あるが、これはもう売却したのか。
A:三井住友銀行と、東京三菱UFJ銀行の株。
まだ保有している。株価の回復を待って売却したい。
Q:来期の計画(売上高17億円)だが、上期・下期は分けて考えているのか。
A:とくに傾斜配分は考えていない。
Q:高松機械という企業も、コレットチャックを扱う企業として上場している。
エーワン精密との違いは?
A:高松機械は工作機メーカーで、自社の機械にあうコレットチャックを製造している。
エーワン精密はどこの機械にも合うように、短納期で作っている点で差別化している。
[梅原相談役より]
高松機械は旋盤メーカーで、コレットチャックには力を入れていない。
特殊なものや短納期の物は、うちから高松機械に供給もしている。
Q:切削工具の再研磨に力を入れると昨年言っていたが、
研磨の機械を使えば誰でも出来るのでは?
A:研ぎ方で、切れ味・耐久性が明らかに違う。エーワン精密にはそのノウハウがある。
Q:上場以来株を保有しているが、成長性が少々期待外れ。ニッチな業種だからかもしれないが。
新工場は何のために建設したのか?
A:[梅原相談役より]
新工場の計画は、私が社長だった9年前に、会社を違う方向へ持っていくために立てた。
"工具の再研磨"への進出だけでなく、再研磨をするうちに
新規開発のノウハウも分かるだろうと考えた。
そろそろ頃合いだと判断し、新規開発のための工場としてGoサインを出した。
一番古い工場をつぶし、8月に完成した。
Q:昨今の製造業の低迷を受けて売上高が2/3なのに、経常利益が20%を超えているのはさすが。
有価証券評価損で消えているのが残念だが、そもそもどうして銀行の株に手を出したのか。
A:株式を購入したのではなく、金融商品を買った。
最後に買ったのは3年前。
株価が良ければ配当が付くが、ある額を下回ると買い取らなくてはいけないという条件。
余資の有効活用として慎重にやったつもりだったが、予想を上回る下落が起きてしまった。
<感想>
・ノーネクタイの監査役が居眠りしているのが気になりました。
印象は、「監査役 野崎修平」に出てくる無気力監査役そのまんま。
(調べてみると税務署出身の社外監査役だった。)
これでは監査報告の中身は信用出来そうにありません。
いっそ解任動議でも出した方が良かったかな?
・新工場建設に、梅原相談役が「Goサインを出した」との発言が気になりました。
著書には「相談には乗っても経営はもうやりません」と書いてありましたが、
やはり現在も強い影響力があるようです。
・金融商品についての説明では、改めて株のリスクを思い知りました。
説明を聞く限りでは、たしかにリスクの低そうな商品ではあるのですが・・・
林社長は野村証券出身であり、リスクが分かっていなかったはずがありません。
それでも、世界同時不況はやはり想定外だったようです。
逆に、株式を公開する企業の側としては、株をただ株として売り出すのではなく、
下落時に発動するなんらかの条件を付けた金融商品として売ることで、
下落リスクを回避することも可能なのでしょうか。
そのあたりに興味が出てきました。
・事業報告は、招集通知にも書いてある事業報告を、ただ社長が朗読するだけでした。
少なくとも一ヶ月は前に書かれた原稿のはず。
この一ヶ月で、加筆修正するようなことは何にも無かったのでしょうか?
せっかく経営者と直に会える場なのだから、もうちょっと生の声が聞いてみたいと思いました。
エーワン精密に限らず、株主総会はほぼセレモニーと化していますが、
それで良いのでしょうか・・・
月: 2009年9月
クレーム考 <不満を引き出す調査をしよう!>
お客様がいちいちクレームを言わずとも、確実に蓄積していく小さな不満・・・
前回はそれに起因するクレームについて書きました。
今回は、その早期発見について書きます。
お客様の方から言ってこないのであれば、こちらから聞き出すしかありません。
そう、よくある顧客満足度アンケートです。
(この場合は、不満足度アンケートと言った方がいいかもしれませんね。)
顧客満足度調査についての私の考えは、
2008年12月28日(日) の「CS考 ~調査対象編~」で詳しく書きました。
今回はその続きでもあります。
顧客満足度って、よく5段階になっていますよね。
オール自由記述だと分析が大変なので、なるべく定量的にやりたいのは分かるのですが、
扱い方には気をつけなくてはいけません。
特に真中の「普通」には。
私が思うに、この「普通」というのは、
「どこにでもいる並みの業者だね。」と言われているに等しいんじゃないでしょうか。
お客様には、満足していただいた上でリピーターになっていただかないといけないのだから、
「普通」じゃ駄目なんです。
なのに、「やや不満」や「不満」と答えたお客様にだけ
その理由を聞いているアンケートをよくみかけませんか?
調査の目的が分かっていないからそうなるんですね。
そして、この「普通」にこそ「小さな不満」が隠れているのではないか・・・? と思うのです。
どんな企業も、そして社員も、基本的には「お客様を満足させよう」と考えて仕事をしているはずです。
精一杯好感を与えるように接客し、注文通りの品物を仕上げ、納期を守って納品して・・・
なのに、返ってきた答えが 「 並 み だ ね 。 」 だったら?
きっと、気付かないところで不満を与えているのだと思います。
それを引き出す調査が出来れば、より意義のある調査になるでしょう。
そもそも、何らかの仕事をしたら、お客様の心の中には必ず
「満足」か「不満」、あるいはその両方の感情が産まれるはずなんですよね。
人と人の間になんらかのやり取りがあって、
何の情動も芽生えないということはあり得ませんから。
そう考えると、「普通」という選択肢自体が不要なのかもしれませんね。
クレーム考 <見えない不満>
突然ですが、このブログをお読みのみなさんは
自らの不始末でクレームを起こしたことがおありでしょうか。
私はあります。もう数年前になりますが、出禁が一件。。。
それはさておき、最近、クレームには2種類あることに気付きました。
今日はそれについて書こうと思います。
一つは、大きなミスをしてお客様を怒らせてしまうこと。
この手のクレームをフォローするのは、ある意味簡単なんです。
お客様が怒っている理由・原因が、誰の目にも明らかなので。
しかし2つ目は事情が異なり、少々厄介です。
それは「累積した不満」です。
お客様との日々のやりとりの中で、些細なコミュニケーションギャップ等が度々あると、
お客様の心の中には、表には出ない"小さな不満"が積み重なっていきます。
そしてある日、ちょっとしたきっかけで一気に噴出し、
「クレーム」として怒りの電話が会社にかかってくることになります。
この手のクレームは、一つ目と違って対処が難しいと思います。
原因が見えづらいからです。
一回一回の"小さな不満"は、多くの場合、すくなくともこちら側は
「粗相をした」という意識が希薄です。
たとえ気付いたとしても、その場で簡単に謝って済ませ、
いちいち上司には報告しないことがほとんどでしょう。
お客様の側も、もしかしたら「粗相があった」とは明確に感じていないかもしれませんし、
感じていたとしても、一回一回の出来事を具体的に覚えている人の方が少数派でしょう。
それでも、不満という「感情」だけは長期にわたって確実に蓄積していきます。
そのため、実際に届くクレームの内容は、
直接のきっかけとなった件についてのみであることがほとんどになります。
すると、クレームを受ける側としては、
「たしかにこちらの粗相ではあるけれど、
この程度のことでなぜここまで怒っているんだろう?」
と首をかしげることになります。
とりあえずその件についてうまく対処し、ひとまずクレームを収めることに成功したとしても、
それだけではお客様の心の中に「不満の根」が残ったままです。
また次も、些細なことがきっかけでクレームになるかもしれませんし、
今度は何も言わずにお客様は去っていってしまうかもしれません。
表面的にはつつがなく取引を続けているお客様も、
もしかしたらそういう不満を抱えているかもしれません。
では、そういった「表面化するまで見えない不満」を、どうやったら
早期発見出来るでしょうか?
→つづく。
見えないものは分からない。 ~可視化と情報公開~
ちょっとネガチブなタイトルと思われるかもしれませんが、
その通りちょっとネガチブな内容です。
つくづく思うのですが、人間なんてそんなに賢いもんじゃありませんね。
私自身もそうですし、私なんかよりずっと仕事ができう人間でもそうです。
ほとんどの人間は、「見えているものしか分からない」んです。
目に見えてないものは存在し無いも同じで、たいがいは思慮の外です。
なんとなくその"気配"に気づくことはありますが、所詮は気配どまり。
その"存在"の、「実態」、「大きさ」、「存在意義」などを、"実感"することは滅多にないでしょう。
そして、この"実感"こそが大事なのであり、
だからこそ、"実感"を喚起するために「可視化」が重要なんです。
人は、"実感"しなければ、いくら頭で分かっていてもアクションを起こさないからです。
使われていない会議室の電気がつけっぱなしだった場合、
経費を払う側である経営者にとっては、さぞ苦々しいことでしょう。
そこで、「無駄遣いは止めましょう」と呼びかけたとします。
一般論としてそれが正しいことは子供にも分かります。
しかし、それがお金にしていくらの無駄なのか、数字で見せられないことには
「もったいない!」という実感はなかなか湧かないものです。
もったいないと思ってなければ、消し忘れも減らないでしょうし、
注意されたとしても、「なんだ、そんな細かいこと・・・」と内心反発することでしょう。
無理からぬことだと思います。
大抵、電気代に限らず、オフィスの賃料だとかパソコンのリース代だとか、
そんな経費は経理部と経営者しかしりません。
その手の情報を、積極的に一般社員にも公開している会社というのはあまり聞きません。
見えている景色が違えば、その景色を見て感じることも違うはずです。
これはもう当然のことです。
同じ意識を共有したければ、同じ情報を可視化して共有するしかないんです。
そうしない限り、「うちの社員は無駄遣いが多くて困る・・・」という経営者の愚痴は、
未来永劫止むことは無いでしょう。
自分にだけ見えていても、積極的に可視化&情報公開していなければ共有されません。
同じ実感を持つよう要求する方が無理な話です。
だからこそ、経営者には
「社員達には何が見えてないのか?(何を見せていないのか?)」
が見えていなくてはいけないと思います。