2019年台風19号の教訓(2:発災時の行動)

※今回から、「防災」カテゴリを新設しました。
遡って、前回の記事もこのカテゴリに含めました。

地震とは異なり、台風のような気象現象は、危険度が高いことを事前に予見できます。
(今回の台風19号もそうでした。)

そして実際に台風が近づいて雨風が強くなり、危険が差し迫ってくると、ニュースでは「命を守る最善の行動」を呼び掛けるようになりました。
少し前までは聞かなかったこのフレーズ、調べてみたところ今年3月から導入されたものでした。

 

なんでも、2018年の「西日本豪雨」の際には、警報の意味が分かりづらく、「危険性・避難の必要性」が十分に認識されなかったそうです。
その教訓として導入された「五段階の警戒レベル」の「警戒レベル5」(最上位)において、住民がとるべき行動が「命を守る最善の行動」だとされています。

 


「住民がとるべき行動」を具体的に表現したのことは評価できるのですが、この大胆なフレーズだけが視聴者の印象に残り、一人歩きしてしまうことを懸念しています。

なぜなら、本来は一つ前の「警戒レベル4」が出た時点で避難しているべきだからです。
(高齢者等は、さらにその前の「警戒レベル3」で避難。)

私は、このフレーズは「あくまでも、いまだに避難せずにいる危機感の薄い住民の尻を叩くため最終手段」だと解釈しています。

自然災害の多いこの国で、防災行政は年々進化しているように感じていますが、それでも逃げ遅れる人はいます。
きっと、「ここはまだ大丈夫だろう」という意識があるんだと思います。

そういう人も、「大丈夫ではない」ことをハッキリ認識できた時点でなら避難するのでしょうが、それはどういうタイミングでしょうか。

庭先に水が押し寄せてからでは、遅すぎます。
その時点ですでに避難所への道が水没している可能性だってありますから。
多くの浸水被災者が証言していますが、水位が上がるのはあっという間です。
避難のチャンスを逸したことに気づいた時には一階が水没し、結局ベランダや屋根からヘリコプターで救助されることになるかもしれません。

 

私は、逃げ遅れをより減らすためには全国民が根本的に考え方を変える必要があると思います。

避難の必要性をまだ明確に認識できないタイミングでも、「本当に避難が必要になった時のための予行演習として、避難所へ行ってみよう。」と考える習慣を根付かせるのです。

前回も少し触れましたが、「実際にやってみて初めて分かること」は世の中に沢山あります。
平時に避難所(に指定されている施設)へ行ってみることももちろん大事ですが、本当に避難所が開設されている状況の方が「よりリアルな予行演習」になることは間違いありません。

行政職員はどんなことをしてくれるのか、どんな設備・備蓄があるのか等が、リアルに分かるのですから。


これは別に、防災だけに限定した話ではありません。

普段から「ささいな問題をあえて大袈裟に捉え、予行演習の機会として活用する」という考え方を持つことは、様々なトラブル対応に役立つと思います。

そうでなければ、たとえ「非常時への備え・計画」があったとしても、「本当に必要になった時に、初めて実行する」ことになってしまいます。

それでうまくいくでしょうか? 私は難しいと思います。

 

次回は、被災後の行動について取り上げます。