2019年台風19号の教訓(1:平時の備え)

過去に何度か触れていましたが、私は多摩川の近くに住んでいます。

先週の台風19号では、自宅は無事だったものの、近隣のいくつかの地域で浸水被害が発生しました。

河川の水が溢れる「外水氾濫」と市街地の雨水が排水できずに低地が冠水する「内水氾濫」の両方があり、川崎市では死者も出ました。

 

これから数回に分けて、この災害を通じて学んだこと・考えたこと・感じたことを書き留めておきます。

あくまでも個人の経験を元にした私見ですが、読者の皆さんが防災について考える際の参考になればと幸いです。


まず最初のテーマは、「平時の備え」です。

 

多くの自治体は、「防災ハンドブック」のような資料を、WEBや紙媒体で公表しています。

そういった資料には、大抵は「日頃から、災害時の行動について家族と話し合っておきましょう」といったことが書いてあります。

これに真剣に取り組んでいる家庭は、どれだけあるでしょうか。

 地図で最寄りの避難所の場所を確認しておく程度なら、多くの家庭でやっているかもしれませんが、それだけでは不十分だと思います。

さらに踏み込んでやっておいた方が良いことを具体的に挙げると、以下の4点になります。

<1> 複数の避難所を確認する。
<2> 実際に行ってみる
<3> 要配慮者やペットの受入可否など、自分にとって重要な条件を満たす避難所を確認する。
<4> 災害を種類・程度ごとに、複数のパターンを想定しておく。

 

一つずつ、詳しく解説します。

<1> 複数の避難所を確認する。

多くの避難民が発生すると、避難所が満員になってしまうこともあります。
当然、後から来た者は入れてもらえず、別の避難所へ行くよう促されます。
そんな場合にもすぐ移動できるよう、複数箇所の避難所の位置を頭に入れておくとよいでしょう。

また、河川の氾濫や津波といった「水の害」に備えるなら、低地の避難所では不安が残ります。
自宅から離れていたとしても、高台の避難所をチェックしておくとよいでしょう。

※低地の避難所でも、2階以上なら比較的安全かもしれません。
しかし、避難するタイミングが遅いと、2階以上がすでに満員になっている可能性があります。


<2> 実際に行ってみる

何事にも言えますが、実際にやってみて初めて分かることはたくさんあります。

避難時の携行品をまとめた「防災袋」を背負って、実際に歩いてみることで、避難にかかる所要時間が分かります。
(雨天など、悪条件で試すとなおよいでしょう。)

また、防災袋の重量が適正かどうかも分かります。

※津波から逃げる場合、上り坂を走ることも考慮する必要があります。

 

<3> 要配慮者やペットの受入可否など、自分にとって重要な条件を満たす避難所を確認する。

家庭に高齢者・障碍者・乳幼児などの「要配慮者」がいる場合、最初の避難所から「福祉避難所」(二次避難所)への移動が必要になるかもしれません。

さいたま市のWEBサイトによると、福祉避難所は「災害の規模や小中学校などの一般の避難所の状態や受入施設の状況により、市の要請に基づき開設する」そうなので、事前に確実に把握しておくことは難しいかもしれません。
しかし、近隣で候補となる施設を確認しておくくらいなら、できると思われます。

ペットの受入については、避難所によって様々だと思われます。
「不可」、「外に繋いでおくなら可」、「キャリーケースに入れるなら可」等々。
ペットの種類によっても違うでしょうから、個別に問い合わせるのが一番確実です。

 

<4> 災害を種類・程度ごとに、複数のパターンを想定しておく。

集合住宅の1階にある電気設備が水害で故障した場合、直接の浸水被害を免れた2階以上の部屋でも「長期間の、電気の無い生活」を強いられる可能性があります。
すぐに修理できるとは限らないので。
「街の電気は復旧しても、うちのマンションは全部屋真っ暗」という状況が、十分あり得るわけです。

真夏であれば、冷蔵庫の中の生鮮食品はすぐにダメになるでしょうし、エアコンが無ければ最悪の場合命に関わります。
親戚や知人の家に身を寄せることになるかもしれません。

このように、間接的な被害やその期間まで考慮し、様々なパターンについて「こうなった場合はこうしよう」という計画を立てておくとよいでしょう。
幸い、現代はインターネットが発達したおかげで「学ぶべき過去の災害事例」はすぐに手に入ります。

※電気設備についての豆知識を一つご紹介します。
電力会社が所有する設備は電力会社が修理費を負担しますが、集合住宅側の所有であれば、オーナーや住民が負担することになります。
管理組合の積立金で賄えればよいのですが、積立金がまだ十分にない新築マンションの場合、住民が直接出費するケースもあるそうです。

 

次回は、発災時の行動について取り上げます。