今日のテーマは「設計・開発」です。
「設計って、図面を描くことでしょ?」と思われるかもしれませんが、
ISO9001の規格の文脈においては少々意味合いが異なります。
7「製品実現」の章に 7.3「設計・開発」という条があり、その中に
7.3.1「○○の計画」
7.3.2「○○へのインプット」
7.3.3「○○からのアウトプット」
7.3.4「○○のレビュー」
7.3.5「○○の検証」
7.3.6「○○の妥当性確認」
7.3.7「○○の変更管理」
の項があります。
(○○の部分は"設計・開発"に置き換えてお読みください。)
あれこれと要求されているわけですが、
「そもそも『設計・開発』とは何をするものなのか」が明確ではありません。
そのため、この条を適用除外として認める基準は認証機関によってバラバラです。
(アイソスNo.146「認証機関への質問」より)
顧客から図面を渡され、「この通りに作ってほしい」と言われるような
「受託製造」型の企業では除外を認めるケースが多いようですが、
私は「7.3.3設計・開発からのアウトプット」に着目し、少し違う結論を出しました。
この項の中では、「設計・開発からのアウトプットは次の状態でなければならない」として、
「b)購買、製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する」ことを要求しています。
つまり、「設計・開発」とは「購買、製造及びサービス提供」のための、
ひとつ前の準備段階なんですね。
そもそもISO9001の構成では、
7.2「顧客関連のプロセス」
7.3「設計・開発」
7.4「購買」
7.5「製造及びサービスの提供」
という順序でならんでおり、設計・開発の前には
「顧客要求事項を明確にする」という工程があります。
顧客から要望を聞き、それを明確化してレビューしたところで、
いきなりモノを作り始めることができるでしょうか?
いきなりサービスを始めることができるでしょうか?
必ず、「この要望を実現するにはどんなモノをどう作ったらよいだろうか?」
「どんなサービスをどう提供したらよいだろうか?」
を考える工程が存在するはずです。
それが無ければ、具体的に何をしたらいいのか分からないはずだからです。
よって、業種・業態・企業規模にかかわらず、
「設計・開発」が存在しないということはあり得ない、というのが私見です。
顧客から図面を渡されている場合、たしかに
「どんな製品を作ったらよいか」は明確ですが、それだけです。
納期までに指定の数を製造するには、
「原材料の調達、稼働人員の調整、ラインの構成」など、考えることはいっぱいあります。
それら「生産計画の策定」が、「設計・開発」に該当します。
(私がよく参考にしている西沢総研のサイトでは、それを「工程設計」と読んでいます。)
もっとも、QMSの適用範囲を個々の製品の品質のみとし、納期や数量を管理外とするならば話は別ですが。
私のような解釈の仕方は一般的ではないようで、
実際、規格の「7.1製品実現の計画」の注記において
「組織は、製品実現のプロセスの構築に当たって、7.3に規定する要求事項を適用してもよい。」
と書いてあります。
つまり、「生産(製造)計画の策定にあたって、「設計・開発」の考えを当てはめるかどうかは任意です。」
と言っているわけです。
よって、
「何を作ればよいかは顧客から明確に指示があり、
生産計画を策定しさえすれば製造工程をスタートできる」
スタイルの企業であれば、設計・開発を除外出来ると考えてよさそうです。
さて、次回は「レビューと検証と妥当性確認」です。