2009/10/03の続きです。
私は日ごろ、ISO関係のコンサルタントや実務担当者のブログを多く読んでいるのですが、
その中でたまたま見つけた「品質マネジメント8原則」というものが、
私の持論をちょっと違った角度から理論的に補強してくれることに気付いたので、
補強篇を書くことにしました。
恥ずかしながら、この「品質マネジメント8原則」というものを
これまで全く知らなかったのですが、
こちら↓のサイトの説明を見ると、規格の"精神"をうまくまとめたものと言えそうです。
http://www.aims.co.jp/hiketu/8principle.htm
まさにマネジメントシステムの土台です。
これからISO9001取得を目指す経営者の方は、
ヘンテコな日本語で書かれた規格条文を読んで首をかしげる前に、
この原則をしっかり消化するといいと思います。
さて本題に入ります。
上記サイトの「原則1.顧客重視」のページをご覧ください。
「顧客重視とは、顧客のゴキゲンをとることではなく、
顧客もマネジメントシステムに取り込むこと。」
「『顧客情報』は売上の中にある!」
とあります。
これは、私が10/03の投稿の最後に書いた、
>>なお、企業が企業活動全体を通して世の中にアウトプットしているモノに対する世の中からの評価、
>>つまり企業の存在価値の総合評価は、
>>最終的には「中長期的な売上高」と「リピーター率」の二指標に現れるものだと考えてます。
に通じる考え方です。
会社の業務は、顧客のために行われます。
直接的であれ間接的であれ、どんな業務も「顧客のため」という一つの焦点があるはずです。
そして顧客は「対価」を通してその企業の業務を評価します。
その結果として継続的に利益をあげられる企業だけが、企業として存続することを許されるのです。
これは、ISOだのQMSだのを語る以前の、
人類の歴史に企業というモノが誕生した時から変わっていないはずの大前提です。
企業を採点する絶対的な存在は、審査機関でも株主でもなく、顧客だと思います。
どんなに真面目に是正処置をやっても、いくら詳細な顧客アンケートを取っても、
どれだけ優秀なコンサルタントから助言を受けようとも、
形の上ではマネジメントシステムが完成しても、
本来の目的である「企業の成長」が実現するとは限りません。
是正処置の効果は、取り組む人間の能力にも左右されますし、
全ての顧客が本当に正しい情報をアンケートに記述してくれるとは限りません。
そういった業務をしっかりやった"つもり"でも、審査には受かるでしょうが
企業が成長するとは限りません。
企業にとって客観的かつ絶対的な指標があるとしたら、
それは"顧客の支持"が否が応にも反映される、「中長期的な売上高」と「リピーター率」です。
(あくどい商売をすれば、短期的に売り上げを伸ばすことは誰にでも出来るでしょうから、
あえて「中長期的な」としておきます。)
こんな素晴らしいものを、マネジメントシステムに取り込まない手はありません。
短期的な目標として「顧客満足度アンケートの<満足>の数」を数えるのはいいでしょう。
しかし、そのアンケートの手法が本当に正しいかどうかは、どうやって計測するのですか?
それを考えずにいくらアンケートを取っても、茶番でしかありません。
もし、「アンケートの結果は上々なのに、リピーター率は低いまま。」
という状態に陥ったとしたら、それはアンケートの取り方が間違っている証拠です。
ピアノは、ドの鍵盤を押せば、基本的にはドの音が出ます。
しかし時間が経つと弦が緩み、音程がずれます。 そのため、定期的な調律が必要です。
音程がズレているにも関わらず、
「ドの鍵盤を押しているのだから、ドの音が出ているはずだ!」
などと言い張ってもしょうがありません。
アンケートの結果がどうであれ、売上とリピーター率が低ければ、
それは顧客満足が低いということなんだと思います。
現実から目をそらしてはいけません。
アンケート手法の見直しが必要です。
そういった指標は、売上高とリピーター率の二つだけではないかも知れませんが、
とにかく、主観的でも相対的でもない、信頼できる確かな"拠り所"を見つけて
それを足がかりに「マネジメントシステムの調律」を行う必要があります。
でなければ、マネジメントシステムは形骸化してしまいます。
マネジメントシステム自体の有効性を継続的に改善する、とはそういうことなのだと思います。
なお、「中長期的な売上高」や「リピーター率」は、
あくまでも「中長期的な企業の総合評価」であり、それ自体は短期的な目標としては不向きのはずです。
(業種業態によっては適しているのかもしれませんが、慎重に考える必要があります。)
なにしろ漠然とし過ぎていていますので、たとえ良い結果が出来たとしても、
それが製品の良さによるものなのか、営業マンの努力によるものなのか、
はたまた接待の質によるものなのかが見えて来ません。
それらは個別に計測し、フィードバック(改善)も短期的にやらねばなりません。
「中長期的な売上高」や「リピーター率」は、「個別の短期目標の調律」に用いるのが良いでしょう。
“文書の意味を見直そう <3> 「品質目標」 補強篇” に0件のコメントがあります
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しげ says:
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しげです。
私はシステム開発の世界にいるのですが、ISO9001の対応を行っている企業が多くなってきました。正直、現場のSEの間では評判が良くないです。彼等にはISO9001の意味を学習する時間が無い為の無知から来る誤解があります。
それとドキュメント量が増える現実から、どうしてもISO9001には懐疑的です。
私個人もISO9001が固定的な部分が多いので、自社にて開発を行う場合は、CMMIに沿った形の成果物にしています。
しかし、私も柴田さんと同じようにISO9001、CMMIよりも大切な事があると思います。
私の場合は、お客様と接する時は、下記のアジャイル宣言を思うようにしています。
•最も重要なことは顧客を満足させること。早く、そして継続的に、価値のあるソフトウェアをリリースする。
•開発の終盤においても要求の変更を受け入れる。アジャイルプロセスは顧客の競争力を優位にするための道具である。
•数週間、数ヶ月の単位で頻繁に実用的なソフトウェアをリリースする。タイムスケールは短い方がよい。
•プロジェクトの間中、毎日、顧客と開発者は一緒に働くべきである。
•やる気のある人を中心にプロジェクトを構築する。環境と必要なサポートを与え、彼らが仕事を成し遂げると信じること。
•開発チーム内で情報伝達を行う効果的で有効な方法は、Face to Faceによる会話である。
•進捗を測るには、動くソフトウェアが一番である。
•アジャイルプロセスは、継続的な開発を促進する。スポンサー、開発者そしてユーザは一定のペースを保つようになる。
•優れた技術と良い設計に絶えず目を配ることで、機敏になる。
•単純性--最大限に仕事を行わないことは極めて重要である。
•最良のアーキテクチャは自己最適化されたチームから現れる。
•定期的な間隔で、チームにもっとも効果的な方法を反映することで、調律・調整に従うようになる。
柴田進 says:
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しげさん
コメントありがとうございます。
(返事が遅くなってしまいすみません。)
自社で取り組んでいるのがISO9001のため、
これまでISO9001のことしか勉強してきませんでしたが、
他にもいろいろな手法があるのですね。
もっとも、目指すところ(顧客満足)は同じはずですが。
品質マネジメント8原則は、なにもISO9001だけの土台ではなく、
企業内のあらゆる業務システムの土台に成り得るものだと思います。
これを起点とし、顧客満足というゴールを目指すのが「仕事」であり、
その間にある経路としてどのようなメソッドを選ぶかは、
組織の(経営者の)自由ですね。
なお、私は
「完成度の高いシステムは、その”意味や目的”をことさらにユーザーに教育せずとも、
ユーザーが日常的に利用する中で自然とそれらを理解出来る。」
という風に考えています。
以前いた会社で日常的に使っていた業務システム(CRM+SFA)がそうでした。
ISO9001をそういうシステムにすることを目指しています。
ドキュメントの量については、下記2サイトが参考になるかと思います。
http://www.n-souken.com/news/news091001.html
http://society6.2ch.net/test/read.cgi/atom/1078407054/232-234