企業の内的変質 ~組織の在り方~

どんな企業でも、創業したてというのはたいがい数人だ。
一人ないし二人の創業者に、賛同者が何人か集まればいい方だろう。
多くの場合、創業者は自身の交友関係を元に人を集める。
創業まもない会社には知名度や信用が無く、求人広告は無意味だろうから。
気の合う仲間が集まり、事業を発展させるという夢を共有しているのだから、
自然とサークル的なノリが生まれ、和気あいあいとした職場になる。
しかし、ある程度事業が軌道に乗り、人数も増えてくるとそうはいかない。
当然ながら、創業者の友人などでない人間が大半を占めるようになる。
そういった組織を統率するには、それまでとは全く違うやり方が必要になる。
10人の組織というのは、5人の組織を倍にしたものではない。
全く異質なものだという認識が必要である。
30人の会社もまた異質であり、100人の会社も然り。
30人31脚という競技がある。
小学生を30人並べて足を結び、一斉に走るものだ。
「ああ、2人3脚の大人数版か」と思うなかれ。
私は、全く異質なものであると考える。
2人3脚が足並みをそろえるには、お互いに、隣の人間を見て気遣えば良い。
歩幅に差があっても、広い方が狭い方に合わせてやれば済む。
そうやって息が合ったペアを、15組集めて一列に繋げれば、
息の合った30人31脚が出来上がるだろうか?
まず無理だということはやらずとも分かるだろう。
テレビで放映している30人31脚を見ると、全員、お互いを気遣ったり歩幅を気にしたりせず、
全員が全力疾走している。
当然だ。
自分以外の29人を気遣うことなど不可能だし、歩幅や歩調を合わせる練習をしたところで
スピードなど出るわけがなく、勝負ならない。
それでも転倒せずにちゃんと走れるのには理由がある。
足の速い人間を真ん中に据え、両端にいくにつれ遅い人間を配置する。
これにより、全員が全力疾走しても列がバラバラになることはなく、
雁の群れのように「>」の形で走ることが出来るのだ。
こんな戦術は、2人3脚をやっている時にはまず考える必要が無かったことである。
30人31脚で勝つには、全く異質な統率と練習が必要になるのである。
人数が増えるということは、組織が相似形で大きくなるわけではなく、
質的な変化を伴うという良い例である。
その上で、古くからの構成員が、「こんな練習はいやだ。2人3脚をしていた時の方が楽しかった。」
と言い出したらどうするか。
経営者は決断を迫られる。
私は、組織の成長についてこれない人間とは袂を分かつしかないと考える。。
違う生き方を選ぶのも個人の自由だが、
組織の成長の足を引っ張る行為を許すわけにはいかないだろう。