文書の意味を見直そう <2> 「品質方針」 後篇

前回は、「品質とは企業の存在意義そのものである。」ということを書きました。
(やや極論かもしれませんが。)
では、「品質」の「方針」とはなんでしょうか。
これも「企業の存在意義の方針」と言い換えることが出来ます。
ちょっと妙な日本語ではありますが、
こうすると「経営理念」や「事業方針」とかなり近くなってきましたね。
日本規格協会の発行している
「対訳ISO9001:2008 品質マネジメントの国際規格」の215頁には、
「一般に品質方針は、組織の総合的な方針と整合しており・・・」とあります。
特に理由が無い限り、別々に作るのは二度手間ではないでしょうか。
もちろん、「経営理念」には、対外的に産みだす製品やサービスの品質以外にも、
幅広い概念が盛り込まれるケースもあります。
なので、両者は完全に同一ということではなく、
「経営理念が品質方針を含有している」という位置づけになります。
改訂のサイクルですが、品質方針を毎年書き換える必要はないと思います。
別に変えてはいけないというわけではないのですが、
少なくとも「組織としての総合的な方針」と整合しているモノが
年単位で変わるのは不自然だと思います。
「品質」という言葉に限らないのですが、どうもISO用語と言うのは
普通の日本語と微妙に意味が違いますね。
同じ言葉を使っているから、なおのこと紛らわしい。
さて、2009/7/12の記事で、「品質方針を品質マニュアルに盛り込んでもいい」と書きましたが、
その理由を説明します。
企業のあらゆる組織、人員、システムは、
「経営理念の実現」を共通の”焦点”として機能するものです。
品質方針や品質マネジメントシステムも、その中の一部です。
逆に考えると、品質マネジメントシステムとは、品質方針の実現のためのシステムだ、
ということになります。
品質マニュアルは、その企業の品質マネジメントシステムの在り方を明文化したものです。
その冒頭に、当該システムが何のために存在するシステムなのか
記しておくことは重要なことです。
なお、「品質目標」の方は別に品質マニュアルに記載する必要が無いと思います。
品質目標は、品質方針に基づき、組織内の各階層や部門ごとに設定されます。
規格には「製品要求事項を満たすために必要なものを含む・・・」とありますが、
シンプルに考えれば、「品質方針の実現度合いの目標」と言い換えてもいいのではないでしょうか。
これは、達成度合いを測定し、当然フィードバックを行うわけですから、
長くても年単位で改訂されうるものです。
改訂のサイクルが違うものを、同一文書内に収めるのは賢明ではありません。
なので、品質目標は分けて作成した方が良いと思います。