何をマネジメントするのか? <2>

私の勤務先は従業員数十人規模の「ソフトウェア受託開発業」で、
顧客である某大手SIerから、相互に関連性の無い案件を、
同時期に複数件受注することもあります。
それぞれの案件自体が「相互に関連性の無い」ものでも、
顧客側の担当者は同一人物であることも少なくありません。
そういう場合に、稀にですが「原価の付け替え」が行われます。
たとえば、外注予算500万円のA案件と、200万円のB案件が有ったとします。
私の勤務先に見積依頼が届き、必要な工数を算出したうえで
「A案件は350万、B案件は250万円」という見積書を提出したとします。
このままですと、A案件はノープロブレムですが、
B案件は予算オーバーになってしまいます。
顧客側担当者が、そんな見積書を自社の購買部へ提出しても、
受理されない可能性が高いのは明白です。
特別な手続きを踏めば受理してもらえるのかもしれませんが、
普通はそんな面倒な事はしません。
そこで、「A案件は400万、B案件は200万円」という、
「(フィクションの)見積書を書いてくれ」と頼まれます。
こちらとしてはまぁ、トータルの「受注額」は同じですから、別に文句はありません。
むしろ、断って受注出来ない方が馬鹿らしい。
ちょちょいのちょいと「数字」をいじって一丁上がりです。
誰も損せず、八方丸く収まってメデタシメデタシ・・・
はたしてそうでしょうか?
確かに、「トータルの数字」は変わりありませんので、
金銭的な「損」は、誰もしていません。
しかし、「本当の情報」を受け取れなかった人がいます。
顧客企業の経営者です。
本来なら、「黒字案件1件、赤字案件1件」という報告が経営者のところに届くはずです。
そして、
「この案件はなぜ赤字になってしまったのだ?どこかに問題があったのか? 繰り返さないようにせねば!」
という改善活動が始まります。(たぶん)
ところが、当たり障りのない「フィクションの情報」しか経営者の耳に届かない場合、
当然ですが何も改善はされません。
実際には、「改善すべき課題」が存在すると言うのに・・・
これは、経営者(=マネジメントする側)にとって、かなり深刻な「損」のはずです。
それこそ、金銭的な損に勝るとも劣らない、重大な問題です。
担当者からしたら、自分の抱えている案件の片方が赤字になるのは
(たとえそれが自分の責任ではなかったとしても)嫌なことですから、
隠そうとする気持ちは分からないでもありません。
もしかすると、「こういうのが、案件をスムーズに進めるテクなんだぜ」
と考えているのかもしれません。
to be continued...