月刊アイソス 2010年8月号(No.153) 感想(3)

お待たせいたしました。2010/08/08の記事の続きです。
今回取り上げるのは、中野医療器株式会社のQMSの中でも「営業部」の部分です。
2010/08/21に書いたとおり、記事内に矛盾と取れる部分があったのですが、
執筆者である宇野氏との複数回のコンタクトを経て詳細が明らかになったので、
宇野氏の許可を得て当記事を公開することが出来ました。
なお、当初一つの記事として公開する予定だった「第3回」ですが、
入力してみたところ長過ぎたため、急遽後半部分を「第4回」として分離いたしました。
では前半部分をどうぞ。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
 
私が矛盾と感じたのは、
 ・「実態として、営業部は販売強化のために様々な活動をしています。」
 ・「営業に関しては目標値を決めたのみで、
   具体的に改善に取り組むことがありませんでした。」
という2個所の記述です。まずこれらについて確認いたしました。
また、その「目標値」とはどんなものなのか、
営業部はその活動に於いて、「何をしていて何をしていないのか」も、質問しました。
その結果、最終的に確認できた内容は下記5点にまとめられます。
 (1)ISO取得時に、営業の品質目標として販売目標をあげてもらった。
  それは、元々ある販売目標や販売計画を流用したものだった。
  以来現在も、「品質目標=販売目標」という状態は継続している。
 (2)販売戦略を立てて実行するのが営業部門の仕事であり、当然やっている。
  しかし、「販売計画書」といったような文書は作成されていない。
  品質計画書にも書かれていない。
 (3)現在、販売は不振である。
  改善しようとしているが、昔ながらの行き当たりばったりでやっている。
 (4)具体的な販促活動については、今回のインタビューでは聞いていない。
 (5)裏話的なことは聞いたが、書ける内容ではない。
さて、これらの内容から言えることは以下の2点です。
【1】中野医療器の営業部門には、QMS導入以前からすでに、
   「目標を立てる
   「目標実現のための計画を立てる」(非文書)
   「計画を実行する
   という一連の活動が存在した。
【2】販売の不振(目標の未達成)に対し、改善活動をしているが不十分である
まず【1】について、私の視点から評価してみます。
この点について、宇野氏は「営業がそれをやるのは最低限の仕事
「計画性のない会社でも、それぐらいのことはしている。」とおっしゃっています。
どうやら、「中野医療器の取り組み方はまだまだ甘い」と考えられているようです。
それに対し私は、
「そもそもISOの要求事項の多くは、
最低限のこと、やって当たり前のことを要求しているにすぎない。」
という考えの持ち主です。
なので、少なくともこの部分については
「十分、規格の要求を満たしている」と考えています。
(あくまでもこの部分だけの話です。)
ISO業界には、
「QMSを導入したからには、『最低限以上の』『立派な』品質管理をすべきだ。」
という考えがあるようです。
あるいは、そういう『立派な』管理手法を自社に導入したくて、
ISO9001こそがその雛型であると考えて導入される企業もあるようです。
様々な考え方があることを否定はしませんが、
私の立場はほぼ正反対と言って良いでしょう。
もちろん、「継続的改善」は必要ですが、
「現状のやり方で問題はあるだろうか? 今以上に厳密に管理する必要はあるだろうか?」
を考えた上で、「特に必要が無いから、最低限のまま現状維持。」
という結論を出すことは、全く問題無いと思います。
(さすがに、特に何も考えないで現状維持というのはいただけません。
 ISO9001:2008 の、おそらく8.2.3への不適合です。)
<・・・第4回へ続く・・・>