月刊アイソス 2010年8月号(No.153) 感想

ISOに関わる業務をしている者にとって、
何かと示唆に富む記事の多い月刊アイソス。
本日の当投稿は、8月号P62~65の
「5年後の品質マネジメントシステム」(連載第5回)
を読んでの感想文です。
取り上げられているのは中野医療器株式会社。
20名ほどの医療系製造業です。
ISO13485」という医療機器の品質マネジメント規格の認証を取得していますが、
製造しているのは家庭用の医療機器であり、手術用具メーカーほど
衛生的にシビアではないため、事実上ISO9001とあまり変わらないそうです。
記事を執筆しているのは、この会社をコンサルした
宇野通(株式会社ケー・シー・シー チーフコンサルタント)という方で、
中野医療器のQMSの、導入によるメリット、そして上手くいっていない点を
だいぶ踏み込んで書いています。
QMSを通じて業務改善に成功した点として、
生産計画(営業、製造現場、資材購買の連携など)が
 きちんと立てられるようになった。」
ということが挙げられています。
そんなことは、QMS以前に“企業として”やって当たり前でしょ、
と言ってしまえばそれまでなのですが、
なかなかそれが出来ていないのも中小企業の現実です。
「認証取得」という大義名分を振りかざすことで
きちんとした体制が作れたのなら、それはそれで良いことです。
社長クラスの高い視点から見たら
ISOも所詮は会社運営のためのツールの一つなのですから、
現場を動かすために「こう言えば効きそうだ」と思ったら
迷わず言えば良いのです。
「ISOで決めたルールに従っていろいろ準備するのは面倒ですが、
 ISOの審査のために困るというよりも、
 物を作って品質を確保するために必要です。
 ただし、ISO13485で必須だという意識がなかったら、
 崩れていくかもしれません。
 ちゃんと維持できているのは、ISOの効果だと思います。」
と書かれています。
上手くいっていない点として、まず「品質目標」が挙げられているのですが、
この部分は読んでいて引っ掛かるところが多くありました。
総務など管理系の部門は、無理矢理品質目標を設定してもしょうがないとの理由で
一度は品質目標から外したそうです。
極めて常識的な判断だと思います。(別に設定しても問題ではありませんが。)
ところが、審査員から「全ての部門で品質目標を設定しなくては不適合。」
と言われ、形式的なのを承知で設定したそうです。
これは大きな誤りです。
規格は「全ての部門で品質目標を設定しなさい」などと要求してはいません。
ISO13485:2003の規格原文5.4.1によると、
ISO9001と同じ「relevant funcions」となっています。
relevantとは「関連する」という意味であり、
ISO9001の日本語訳では、「しかるべき」となっています。
また、↓西沢総研のサイトでも、(ISO9001ですが、)
http://www.n-souken.com/news/news081003.html
規格改定の意図にまで踏み込んで「全ての部門ではない」ことが説明されています。
もちろん、企業が自主的にやるのは別に構わないのですが、
「不勉強な審査員と、その言いなりになる企業」が
経営判断から乖離した規格ごっこをしている印象を受けました。
(犠牲になるのは現場です。)
審査員からこのような“会社のためにならない”不適合を受けたら、
その場で言い返せずとも、しっかり調べてから
審査機関へ苦情を入れるのがよいでしょう。
つづく